僕の家に来た時に、彼女はすでかなり濡れていた。僕は彼女にタオルを渡し、ふかせてあげた。ふられたばかりの女性が、男性の家にびしょびしょで来たのだから、そうしてあげるのは当然の礼儀だ。彼女は手土産にアワビを持ってきてくれていた。僕の息子はすでに大きくなっていたので、アワビの調理は彼に任せることにし、息子はゴム手袋をはめてアワビを開けた。開いたアワビに僕はかたい箸を突き刺した。一本の箸だけでアワビを食べようとする独りよがりな僕を見て彼女は私にも分けてと言った。彼女は僕の箸を舐めるように味わった。
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