まるで眠っているように横たわっていた。時折、口元から泡がぷくぷくと水面に向かっている。体は少しずつ死に向かっているのに、そのことを特に意識せず、目を閉じて水底に横たわっていた。別に、体が何かによって縛られているというわけでもない。
海の底、と言ってもそれは浅瀬である。そこら中に木でできた桟橋のある入り江の一角だった。木でできた小舟が幾つか浮かんでいる。そんな海の底で、少女は横たわっていた。太陽の光が彼女の頬をくすぐるように揺れている。浅瀬の底は、木漏れ日の落ちる木立のようである。
やがて、彼女は目を開ける。
ぼこり、と一際大きな泡が、口の中から溢れた。やがて彼女は、ゆったりとした、それであって力強い動作で、肩から先を大きく動かした。繰り返し、腕をぐるりと動かして水を掻く度に、その体は推進力を得て水面へと移動していった。