2019-06-26

右側通行

天国行きの道は右側通行です。

三途の川の渡し守はそう言った。

守れなかったらどうなるんですか?

私がそう尋ねると、彼は笑いながら、さぁ、私の仕事はこの川の岸までなんで。と答えた。

小舟を降り。

この先には天国と地獄があるはずなのに、道は一本しか見えない。

私は先へと歩き出す。右側を通りながら。

でも、おかしな話じゃないか

死者の国へは一方通行だ。誰も彼の国からは帰ってこない。なのに右側通行なの?

私は、すれ違う人がいないか確認したくて顔を上げた。

遠くに人影が見える。背の高い、黒い影。そしてそれは近づいてくる。

通るべきは右なのか、左なのか。

私は意を決し、右側を歩き続ける。

黒い影は間近にきて、こんばんは、と声をかけてきた。

でも、道の反対側だったから、無視し続けることができた。

しかった。私は正しかった。

アレは駄目だ。見ても返事をしても駄目だ。

私はもう死んでいるけれど、きっと今より恐ろしい目にあうところだったのだ。

あの影は、渡し守のところまで行くのだろうか?行くのだろう。

から彼は右側が正しいと知っていた。

けれども、彼が知っているのは多分それだけ。

右側を歩き続けて、まだ先は見えない。

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