三途の川の渡し守はそう言った。
守れなかったらどうなるんですか?
私がそう尋ねると、彼は笑いながら、さぁ、私の仕事はこの川の岸までなんで。と答えた。
小舟を降り。
この先には天国と地獄があるはずなのに、道は一本しか見えない。
私は先へと歩き出す。右側を通りながら。
死者の国へは一方通行だ。誰も彼の国からは帰ってこない。なのに右側通行なの?
遠くに人影が見える。背の高い、黒い影。そしてそれは近づいてくる。
通るべきは右なのか、左なのか。
私は意を決し、右側を歩き続ける。
黒い影は間近にきて、こんばんは、と声をかけてきた。
アレは駄目だ。見ても返事をしても駄目だ。
私はもう死んでいるけれど、きっと今より恐ろしい目にあうところだったのだ。
あの影は、渡し守のところまで行くのだろうか?行くのだろう。
だから彼は右側が正しいと知っていた。
けれども、彼が知っているのは多分それだけ。
右側を歩き続けて、まだ先は見えない。