2019-01-07

手さぐりの人生

目の見えない人は、なかなかケガをしない。むしろ目の見える人のほうが、石につまずいたり、ものに突き当たったりしてよくケガをする。なまじっか目が見えるがために、油断をするのである乱暴になるのである

目の見えない人は手さぐりで歩む。一歩一歩が慎重である謙虚である。そして一足歩むために全神経を集中する。これほど真剣な歩み方は、目の見える人にはちょっとあるまい。

人生で思わぬケガをしたくなければ、そして世の中でつまずきたくなければ、この歩み方を見習うがいい。「一寸先は闇の世の中」といいながら、おたがいにずいぶん乱暴な歩み方をしているのではなかろうか。

いくつになってもわからないのが人生というものである。世の中というものである。それなら手さぐりで歩むほか道はあるまい。わからない人生をわかったようなつもりで歩むことほど危険なことはない。わからない世の中を、みんなに教えられ、みんなに手を引かれつつ、一歩一歩踏みしめて行くことである謙虚に、そして真剣に。おたがいに人生を手さぐりのつもりで歩んでゆきたいものである

松下幸之助

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