周囲を見渡すと小さな子供が屈んでいるのが目に留まった。歩み寄ろうとしてふと、立ち止まる。
その子供の背中には「穴」がぽっかりと空いていた。
漆黒のその闇に見入られた貴方はただ立ちすくみ茫然とする。脚が鉛のように重く力が入らない。
不意に、子供がこちらを振り返り言葉を発した。
「愚か者は立ち去れ」
低い、老女のような声が響く。無垢なはずの瞳は紅く充血していた。
貴方は知らなかった。自分が「愚か者」と呼ばれる存在だと言うことを。
今まで少なからず誰かを傷つけて生きてきたことを。
目を閉じて、唇を噛んだ。
痛むばかりで、夢は醒めない。
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