山の展望台で、コンタクトがずれて目尻をいじっていたら、小学生ぐらいの男の子が俺の眼の前にあった双眼鏡に走ってきて、その子の肩と俺の肘がぶつかり、反動で、目尻をいじっていた手がグッと中に押し込まれた。大した事ないだろう、と思ってその場を離れたが、俺は強度近視で網膜剥離の危険因子保持者だ。俺が網膜剥離になるために、あの子の親は子供を産んだのだろうか。結局、あの子は、あの子の父親が「どうせ何にも見えないからやめとけ」と言ったため、俺にぶつかってまで見ようとした双眼鏡を覗き込む事なく去っていった。俺の眼は、双眼鏡の利用代100円の価値もなかったのか。あの子の親は、俺を苦しめるために子供を産んだのだろう。俺を失明させようとして、子供を産んだのだろう。