夜はもう涼しすぎる夏の終わり、ふたりで歩いていた。
通り沿いに植えられた百日紅が枝を奔放に伸ばし、花を咲かせている。伸びた枝は少したわんで風で花を揺らす。
何年も住んでいた街の何度も通った道だけれど、今まで特に意識していなかった。意識していないと目には映らないものだ。
「満開だね」と私が思わず口にすると「たくさん色があるなあ」とあなたは言った。
「赤っぽいピンク」「ピンク」「すごく淡いピンク」「白」と歩きながら、目に入ってくる花のそれぞれの色を子供のように交互に言いあった。
遠く離れたこの街でも百日紅が咲いているよ。
慣れない通りの百日紅は白だけが行儀よく並んでる。
なんだか色を失ってしまったみたいと思うのは、私があなたを失ったからなんだろう。
もうすっかり秋だなあ。
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