2011-04-04

昔々あるところに、男がおりました。男は、大道芸人でした

しかし、大道芸でくいぶちを稼ぐほどの腕はありません。

そこで、男は一計を案じました

男は大通りに出てふらふらとしています。すると、通りがかった女に肩がぶつかりました。いえ、ぶつけたのです

「おうおう、どこ見て歩いてんだ!」男はわめきたてます

腕がないとはいえ、大道芸人。声も通れば見世物の作法も心得ておりますから、あたりにはたちまち、人だかりができました

女も女で必死に言い返しますが、人さえ集まれば女に用はありません。肩がぶつかったことなど、どうでもよかったのです

男は女を怒鳴りつけると、あとは無視してしまい、今度は集まった人々に芸を披露しはじめました

たいした芸ではありませんが、なにしろ見る人の数が数ですから、おひねりなどもそれなりに飛んできます

男はほくほく顔で、女は歯噛みするばかりなのでした


「決して炎上に近づいてはいけないって、おじいさまが言ってたわ。」

人間の欲とは、おろそろしいものね。彼は、炎上の力を制御できる、そう思い込んでいたのよ。」

炎上の力を利用ですって!?」

「そう。そして、彼自身もまた、炎上の力に飲み込まれてしまったの。」

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