2010-09-14

作家になりたいとあがき続けて12年目の俺が読書暦を語る。

http://anond.hatelabo.jp/20100913002509

まぁ、小説書こうなんて奴は大抵の場合友達が少ない。

小学生の頃、中休みや昼休みに遊びの輪に入れず図書室に逃げ込んでいた。

そこで読んだ「十五少年漂流記」や「ロビンソン・クルーソー」辺りが出発点だろう。大丈夫、俺もそうだ。

そして大方の場合小学校~高校までははっきり言ってクソだっただろう。

グレたか孤独だったかの二択しかない。家庭科の授業と体育は大嫌いだ。大丈夫、俺もそうだ。

そんなわけで、自分の才能はどこにあるか小学生の俺は考えた。運動、論外だ。絵、話にならない。勉強、出来なくはないが一番には到底なれそうもない。そんな時、読書感想文コンテストが市の優良賞に選ばれた。そうか、俺の才能文章じゃね?

そんな風にして小説を書き始めた。中学校一年生のときだ。

書きはじめてすぐにわかった、全然面白くない。

そもそも「書きたいもの」がそんなにない。ファンタジーSFラブロマンスも特に好みではない。

なんとなく「文学」に憧れはあるが、そもそも文学ってなんだ。これは本を読まねばなるまい。

そうして本屋に行ってみた。まぁ、太宰とか三島が有名だよね。

とりあえず「金閣寺」と「人間失格」を買ってみた。どっちも意味がわからなかった。ただ、人間失格を読んだとき「要するにゴミ野郎だよね」と思った記憶はある。これのどこがいいのだろうか、と真剣に思った。金閣寺は途中で放り投げた。

仕方が無いので、遊び人のおじさん(36歳、ヒモ)に相談した。面白い文学ってない?おじさんは「これを読め」と安部公房の「壁」を貸してくれた。世界がひっくり返った気がした。あの衝撃は未だに忘れられない。「S・カルマ氏の犯罪」「バベルの塔の狸」。まさに「衝撃」と呼ぶのにふさわしかったと思う。ようするに、文学とは衝撃なのだとそのとき俺は思った。「作者は何を言いたかったでしょうか?」という国語教育呪縛から解き放たれた瞬間だったと思う。

おじさん、面白かったよ。とおじさんに本を返すと、次におじさんが貸してくれたのは

中島らもの「バンド・オブ・ザ・ナイト」と三島の「不道徳教育講座」だった。今思うと、中一に貸していい本では決して無いのだが。これらの本は「衝撃」という点では安部と全く比較にならないが、とにかく面白かった。中島らものラリった文章と三島と毒たっぷりユーモア。おかげで、俺は加速度的に人生を踏み外していった。その後、叔父さんは叔母さんと離婚しどこかへ消えていってしまった。どこかで野垂れ死んでいるかもしれないが、元気ならいいな、と思う。

さて、高校生になった俺の心を捉えたのは海外文学だった。

もともと、安部公房からスタートした読書遍歴だったのでとにかく「実存主義」というやつに俺は興味があった。

言うまでも無い、カミュである。「論ずるに値する議題は一つしかない、自殺である」(ちょううろおぼえ)のシジュポスの神話、なにより「異邦人」は安部以来の衝撃を俺に与えた。また、この頃俺の心を捉えたのはもう一つ、いわゆるビート文学である。ケルアック、ギンズバーグ、そしてバロウズ(これは中島らもの影響も強い)、そしてもう一つ。読書暦の長い人は次に何が来るか容易に予想が出来るだろうが、ドストエフスキーが直撃した。「カラマーゾフの兄弟」や「罪と罰」は当然として、俺の心をえぐったのは「貧しき人々」だった。あの主人公の愛すべきクズっぷり!誰も悪人はいないのに、誰もが加速度的に人生谷底へ落下していく感覚学校をさぼっては喫茶店でひたすら本を読んだ十代だった。しかし、サルトルに関してはさほどピンと来ていなかった。「嘔吐」が面白いとは全然思えなかったのだ。根っこをみたらゲロが出る、それで?といった感じだった。

この年齢になると読書に対する耐性もかなり固まっていたので、バルザックゾラも読んだ、カフカも読んだ。ラテンアメリカ文学にも手を出し始めた。ボルヘスマルケスも悪くはなかったが、なんといっても「ペドロ・パラモ」のファン・ルルフォが心を捉えた。セリーヌ、ジット、ベケットクノー、ロブ・グリエといったフランス文学の一連の流れも好きだった。とにかく読みまくっていたことだけは覚えている。おかげで、センター試験数学は4/200点だった。

そして高校を卒業した。この時期には熱心に小説を書いていたような記憶がある。だが、今読み返しても全く面白くもなんともない。無駄に重苦しい下手糞な文体、意味不明ストーリー展開、自意識過剰さだけがひたすら鼻につくクソみたいな小説だった。大学入試は願書を出すのを忘れた。家にもいられなくなり、家を出た。その後はなんか二年くらい働いた気がする。ある日ふと、立ち寄った本屋テリー・イーグルトンの「文学とは何か」を読んだ。そうか、よし、文学理論をやろう!そう思って大学を受けた。北海道の片田舎で二年も働いただけあって貯金はそこそこあった。なんとなく某私大を受けたら受かった。奨学金を借りて、三畳間に住んで暮らした。死ぬほど楽しかったことだけは覚えている。図書館の充実っぷりと来たらすさまじいものがあった。幸せだった。いつまでもこうしていたかった。

大学の間は一生懸命研究をやったとしか覚えていない。卒業する頃、現実的に大学院はムリだと悟り就職した。その間に小さい文学賞論文の賞を幾つか取ったけれど、デビューには全くつながらなかった。今はとある金融機関の出納担当をしながら小説を書いている。明日も早いから寝なきゃならない。何が言いたいのかさっぱりわからなくなったけど、とにかく小説っていいものですよね。人生って辛いですよね。そういうわけで、リンク先の増田にイーグルトン読めとお勧めしたいだけなんですよ。面白いよ。

記事への反応 -
  • 小説を書きたいと思った。早速書いてみる。 ダメだ。読みにくいし、つまらない。そもそもこの日本語は本当に正しい日本語なのだろうか? 日本語に自信がない。文系の大学に行ってい...

    • http://anond.hatelabo.jp/20100913002509 まぁ、小説書こうなんて奴は大抵の場合友達が少ない。 小学生の頃、中休みや昼休みに遊びの輪に入れず図書室に逃げ込んでいた。 そこで読んだ「十五少...

    • 正しい日本語なんてないよ。昔の"正しい日本語"が変形していって、今の"正しい日本語"ができただけだし。 小説は、君に自信があってもなくても、面白いかどうかを判断するのは読ん...

    • 別に「正しい日本語」にこだわる必要ないよね。 目的は「読者に分かりやすく伝える」ことであって「正しい日本語」はその手段に過ぎないよ。 「正しい日本語」って何か知らないけど...

    • 小説書きたいなら小説読むのが一番だと思うけどなぁ。 日本語的な正確さよりも、その時々の『今』が書かれていることの方が大事じゃないかと。 言葉の変化や誤認なんかも含めてね。

      • イマなんてものが小説の中に一片でも含まれてるわけねーだろ。ラノベにしろ、ケータイ小説にしろ、それ以外にしたって書かれている内容がファンタジーであるっていう認識はないの...

    • ぱっと見日本語の能力に大きな問題はなさそうなので、とりあえず短編小説を書いてみて増田かどっかで発表してみればいいと思う

    • えぇと、小説を書きたいのでれば、何はともあれ、小説をもっと読んだ方がいい。 一行の長さを考えて文を伸ばす、詰める。 行の空け方にも気をつけたほうが良い。 なんというか、...

    • すばらしいなあ。なにがすばらしいといって、したいことがあってそちらへ向かって進んでいるところだ。 世間の人って案外、心からしたいと思っていることなんて持っていなかったり...

      • なんというか、元増田を馬鹿にしてる感がひしひしとする。 軽いジョギングを始めただけの人に「そんな腕の振りではフルマラソンは完走できんぞ!」って言ってるようなもんだか...

        • 元増田をバカにしてる? 励ましてるつもりだったんだけれど、そんなふうに読めちゃったか。 元増田の目標は、自分が満足できる小説を書くことだと思うんだよね。 一方で、トラバやブ...

    • 新感覚ライトノベル「僕は語彙が少ない」

    • お久しぶりです。下記のエントリを書いた増田です。 http://anond.hatelabo.jp/20100913002509 あれから色々ありまして(文法の勉強は途中で切り上げました)、 本日やっと小説を書き上げること...

      • おー、お疲れ様です。 210枚全然少なくないですよ。 純文学系の新人賞の応募規定は大抵「50枚程度」だったりします。 そもそも書き上げられるひと自体が少ないので、増田さんは超がつ...

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