Re:http://anond.hatelabo.jp/20100902013402
何となくたどり着いた先はジャスコだった。クリスマスの近いジャスコは家族連れでごった返しているが、カップルは比較的少ないように思う。カップルはもっと雑誌に載っているようなこぎれいな場所に出かけてしまうに違いない、と僕は思う。高校生のカップルが目に余るほどいちゃいちゃして通り過ぎていくのは特に気にならない。若さは取り返せないから、あちらの世界は違う世界だと認識できるのだ。同年代のつつましいカップルが一番心をかき乱す。なぜ僕ではないんだろう。なぜ、僕にはないんだろう。そういう考えが頭に浮かぶのはあまり幸せなことではない。
ぶらぶらと歩きながら適当に服を見繕う。別にどこに行く当てもないけれど、良さそうな服があったら買っておくのだ。特に趣味のない僕にとってそれはささやかな散財だった。たまには甘いものとお酒でも買おうか、ということを僕は頭の片隅で考える。
クリスマスソングが流れる店内も、店内のきらきらとした飾り付けも、売り子が張り上げる声もすべて予定調和で心地よくすらある。エスカレーターのそばには大きなツリーが飾られていて、子供がその下を走り回っている。僕は肩からずり落ちてきたマフラーを外しながらぼんやりと巨大なツリーを見上げる。
けえきいかがですかぁという間延びした声に僕はなぜかびくりとして振り返った。売り子の女の子がプラカードのようなものを持って呼び込みをしている。この時期にしかみられないサンタクロースのコスプレをした、きれいな黒い髪の毛の女の子。高校生か大学生か、多分バイトなんだろうと僕は思いながら女の子を視線から外す。別に珍しくも何ともない光景だし、あんまりじろじろ見るのもなんだか変な気がしたのだ。
「けえき」
僕が横を通り過ぎるその瞬間に彼女はすぅ、と息をすってそういった。舌足らずな甲高い、売り子特有の耳障りな声の合間に人間らしい呼吸音が聞こえたことに僕は少し驚いた。思わず振り返ってしまって、彼女と目が合う。
言葉を言いかけたところで目が合ってしまった彼女は、その先の言葉を忘れてしまったみたいに目をしばたたかせた。そして、ちょっと照れくさそうにいかがですか、と小さな声で言う。
思わず振り返ってしまった僕も照れくさくなってちょっと笑う。
あまりの決まりが悪さに僕は、ください、と小声で言った。女の子はぱぁっと誰がどう見ても作り物ではない笑顔になってありがとうございます!と元気よくいう。僕は頭の中でちらりと一人で過ごすのにケーキを買ってるなんて寂しいやつだな、と思われたらどうしようと考える。
ご家族用ですか?と彼女はいった。僕は首を振ってこっちのを二つ、とショートケーキを指して嘘をつく。長年一緒に暮らしている彼女か、もしくは結婚してしばらくたってるけどまだ子供のいない夫婦のふりをして、彼女は忙しくているからささやかなお祝いでもするんだという顔をして、僕は嘘をつく。堂々としていればそういうものは相手に伝わらないんだ、と僕は思い込むことにしている。女の子は透き通った黒い目で僕を見て、にっこりと笑った。
この子は、と僕は頭の片隅で下世話なことを考える。彼氏とかいないんだろうか。カップルであるている同年代をどう思いながらケーキを売っているんだろうか。案外気にしていないのか、気にしないようにつとめているのか。それとも単にサンタのコスプレがしたかっただけなんだろうか。思い出の一つとして。
女の子は何も言わずにフォークを二つつけてケーキをひどく大事そうに箱の中にいれた。少しでも雑に扱うと爆発でもしてしまうのではないかと危ぶむほど丁寧な動作だった。なんてことはない、明日になったらたたき売られるだけのケーキだというのに、その動作は不自然にすら思える。僕はもう一度彼女をみる。
ただ僕が消費するだけのケーキをなんでこの子はこんなに丁寧に、大事そうに扱うんだろう。テレビを見ながら感慨もなく食べるだけなのに。
お持ち帰り時間はどれくらいですかぁと相変わらずの舌足らずな口調で彼女はマニュアル通り言った。僕は何となく30分くらいです、と答えた。30分もかからずに家には着くけれど、これだけごった返していると駐車場から出るので一苦労だろう。子供たちに配るためのプレゼントをたくさん載せた車が、さながらどこかの国から出発するサンタ便のように、たくさんたくさん行列をなして出口へと向かう。その中で、僕は待つ人のいない家へ食べる人のいないケーキを運搬する一人のトナカイなのだ。プレゼントを贈る相手がいないから、サンタクロースもいらない。トナカイのえさがありさえすればいい。でもたまにはトナカイだってケーキが食べたくなったり、その贈り物を自分のものにしたくなることだってある。僕はそういう不届きなトナカイでかまわない。そんなことを考えて僕は誰にもわからないように唇を緩める。
女の子はケーキと同じように釣り銭を丁寧に数えて、その硬貨が実は純金やダイヤなのではないかと錯覚するほどそうっと僕の掌の上にお釣りをのせた。そしてぴょこりと頭を下げてありがとうございましたぁ!とやたら元気のいい声で言う。その動きがあまりにも厳かだったものだから、僕は神聖な儀式に立ち会ってしまったようなある種の居心地の悪さを感じてもぞもぞとする。腕の中のケーキも何かとても特別なもののように思えてくる。僕は何事も起きないように大事に腕の中に抱えこんで、どうもと口の中で言った。箱はたった二つの小さなケーキしか入っていないはずなのにいやに重く感じられた。役目のないトナカイになぜかとても重大なミッションが課せられたような、そんな気がしたのだ。
ひっきりなしに開閉する自動扉のむこうにはちらちらと白い雪が降り始めていた。ぼんやりと口をあけて僕は空を仰いでいたけれど、忍び込んできた冷気に思わず身を縮める。白い息が鼻からゆらゆらと立ち昇っていく。ジャスコの中のざわめきは自動扉がしまると遠くなり、再びあくとまた耳に飛び込んできて、なぜかひどくさびしい気持ちになるから僕は片手をポケットに突っ込んで、もう片方の手で大事にケーキを抱えて、歩き出そうとした。また自動扉が開いて、そしてあの女の子の声が聞こえる。振り返った僕の目に、あの女の子は映らなかった。かわりにたくさんのトナカイが子供を追いかけたり、疲れた顔をしてベンチに座り込んでいたり、なぜかピリピリとした顔をして怒っているのが見えた。僕は少し笑った。クリスマスのジャスコにはトナカイがたくさんいる。そして、贈り物を待つ子供のために疲れたり悩んだり怒ったりしている。時間も体力もないトナカイのためにジャスコは今日も開いている。
雪はもう静かに積もり始めている。
※この話はフィクションです。実在の人物、団体、企業とは一切関係ありません。
※くそあついのに冬の話かよという苦情は受け付けておりません。
いつも、どこかで飛行機を見ていた。いつも音が聞こえていた。 空港に近すぎもせず遠すぎもしない成田ニュータウンでは空港関係者のほうが多い。学校では親の職業というのがそれと...
ずっと「トカイ」にいかなければと思っていた。育った町は関東に位置している田舎だった。電車に乗れば東京までたかだか一時間半か二時間程度の場所でも、十分田舎だった。電車を...
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re:anond:20100902202345 ・・そんな過去の実話を夢と二次元と一緒にこね上げたストーリーを一冊の本に仕立て上げ、 コピーして用意して発送して指示して用意して描いて書いて払い込んで...
バスが走ってるなんて、なんて都会だろう? としか思えない。 こういうのってきりがなくね? バスなんて、都内に来るまで乗り方知らなかった。
元増田は田舎自慢なんかしてないだろ 全部読んで言ってるか?
だれがじまんした?
20100831203134の増田。 あのな、どっちが田舎だって田舎度の話は全然してねえんだよ。 それなのに「お前のところなんか都会だろ。田舎ってのはうちみたいなところ。でも言い出すときり...
地方から出てきた人は、なんでバスに乗るときに戸惑うんだろう? 普通に金払って乗るだけなのに。
田舎のバスは後払いだったり後ろ乗り前降りだったり、まあいろいろあるわけよ。 俺が子供の頃乗ってたバスは、車掌が車中で料金集めてたしなあ。
ええ? 後ろから乗って、前から降りる? 料金後払い? 不思議な事をするね。田舎らしいと言うべきか。
都内も結構あるよ後払い。無知すぎ。
田舎かどうかを都内かどうかにすり替えるテクニック凄いですね^^ あたかも都内に田舎が存在しないかのように錯覚するところでしたw
田舎者は自分の見知っていることが全体の一部にすぎないということを分からない
意外に複雑なんだよねバスの料金って 俺の中でバスの料金っていうのは、駅に行くときは前から乗って先に金を払い、駅から乗るときはあとで金を払うものなんだが 同じ県内の違う路...
後払い、先払いって複雑か? ・一律料金でないかぎり100%後払い ・整理券がある場合100%後払い ・前から乗る=先払い/後ろ乗る=後払い でないだろうか? 料金システムよ...
・ネットで調べても路線図および時刻表がなかなか出てこない。 ・やっと出てきても情報が古くて実際の運行状況とズレている。 ・結局営業所に電話で確認→当日電車の乗り継ぎに失敗...
複雑かどうかはともかく、 地方は、そういう一手間余計なものをありがたがる風潮があるよね。 というのが、大本の増田の文章だったりするw
バスに関して言えば、後ろから乗って前から降りるのも、料金が後払いなのも、そのほうがシステムとして合理的だからなのだが。
都内(=23区内)の路線バスはほとんど均一料金だよ。 距離によって料金が変わる従量制路線バスは都下にならある。
整理券wwwwwwwwwwwwwww
これは良い文章。 しかし地方の人間って、普通ならダサくて仕方が無い安物の装飾品を、なんであんな高値で買うんだろう。いくらなんでも限度というものがあるだろうに。 まあそれ...
おまえも全く同じ理由で見下されていることに気付こうな。 それが出来たらちょっとは賢くなれたってことだw
そんなこと、どーでもいーじゃないの?
そうだねえ。どんなに「東京一極集中はよくない!」と叫んでも、東京の魅力は揺るがない。 そこに気づいた元増だから書ける文。 やはり田舎は嫌悪されるべき対象。
4代くらい前から山の手の内側に住んでいる身ですが、 子供の頃に親の仕事の都合で5年半ほど地方に家を借りて住んだことがあります。 その上で思うことは、古くから人が住んでいる...
4代くらい前から山の手の内側に住んでいる身ですが、 子供の頃に親の仕事の都合で5年半ほど地方に家を借りて住んだことがあります。 その上で思うことは、古くから人が住んでいる...
あなたの今住んでいる土地も、かつては海洋生物を捕縛または虐殺するための場所だったということをゆめゆめ忘れないようにしてくださいね^^
それを言ったら関東自体、火山灰が多くて人には住みづらい土地だった。 京都だって地相がいいってだけで、実際には熱気はこもるし海は遠いしで住みやすい土地ではない。 日本全体...
本来住みやすい土地に住んでいたのであれば、空間恐怖症みたいに段々畑や棚田みたいなもん作らなくても済むよなあ。
地方から出てきた方には知らない方も多いかもしれませんが、それらは処刑場だった場所です。 この一文でハッとした。 普通に東京で生まれて育った我々としては、いつの間にか耳...
港北ニュータウンでも、元処刑場の「血流れ坂」だったところが 改名されてニュータウンっぽい地名になってマンション建ってるよ
そもそも山の手の内側という言葉が意味不明なんだよな。 ・山手線の内側 ・昔山の手と呼ばれたエリア(山手線の西側よりちょっと内の辺り) ・最近は山の手と認識されているエリ...
「下町」に対する「山の手」 「山手線の内側」 この2つは明確に分離されてる表現だと思ってたわ俺
すみません。山手線の内側を表したつもりでした。 ちょっと具体的に言うと、赤門の近くに住んでますよ。
本郷のどのあたりかによるけど、本来の意味からすると江戸の外ということで山の手じゃないものね。
http://anond.hatelabo.jp/20100831203134 http://togetter.com/li/18345 はっきり言って、HMV、Right On、ピンクラテ、IKKA、ヴィレッジヴァンガード、ワーナー・マイカル、無印良品がある程度で「擬似東京」...
全くどうでもいいのだが「トナカイとジャスコ」に見るたびに空目しちゃってしょうがない。 あと、自分は真性オタクなのでアニメイトからしんばんかメロンかKかとらかだらけかそのあ...
http://anond.hatelabo.jp/20100831203134 千葉の県境の手前にあって、未だによく千葉県に間違えられる23区の辺境で育ち、自転車にジャスコに通っては家電売り場の展示品のパソコン「PC-6001」にべ...