2010-07-28

僕は壊れてしまった

 5年に一度くらいの頻度で人を好きになる。

 だけど、僕には欠陥がある。

 僕は傷を抱いた人しか好きになれない。

 彼女と出会ったのは今から一年半年ほど前、僕が働く会社アルバイトスタッフとして入社した。僕は社会人で、彼女大学生だ。

 僕が彼女に対してはじめに抱いた印象は、決して良くなかった。人は見た目が九割というが、彼女はどう見ても外見的に僕が好きになるタイプ人間ではなかった。

 いかにも軽薄そうで、世渡り上手な感じで、ギャルのように見えた。そういった心証があった。

 僕と彼女はすれ違っていた。あまり会話も交わさない、お互いが顔を合わせた時は便宜としての挨拶。「おはようございます」と声を掛け合うくらいの関係。

 今となって思うのは、そのままの方が良かったんじゃないかってこと。

 だけど、いつしか変化が訪れた。僕と彼女喫煙者なのだけど、会社喫煙所で軽く会話をした。趣味の話や、仕事の話はもとより、プライベート愚痴だったり、彼女学生生活の話だったり。

 とりとめのない会話が続いたけど、僕が先に抱いた心証は少しずつ変わっていった。

最初は気むずかしい人だったと思ったけど、話してみたら案外面白いですよね」なんて僕は言われる。それはだけど、僕もおんなじだったんだ。

 彼女との関係性に変化が現れたのは昨年の冬。

 仕事上がりが重なったせいか、彼女の気紛れで一緒に遊びに行こうという話になった。

 よく分からない。

 一緒にスポーツをしたり、夕食を食べたり、した。

 それから何度か、遊びに出掛けたり、飲んだり、した。

 しかし、関係性に若干の変化が訪れても、当時の僕はまだ彼女を好きになっていなかった。

 いつだったか、よく覚えていない。たしか、今年の初頭だったと思う。

 彼女から相談を受けた。

 彼女には別れようと思っている彼氏がいた。その彼氏は、彼女がいうには未練たらしく関係の再構築を謀ろうとしたらしい。彼女が別れようと思った理由は、端的にいえば浮気だ。彼氏ケータイを覗いた時に、その証左を得たらしい。

 どういった証拠を掴んだかはここには書かない。だが、吐き気がするものだ。ケータイを使って確固たる証拠となるものといえば、いくつかしかないだろう。

 彼女は頻繁に届くメールや鳴り止まぬ電話に、少しの怯えを見せていた。

 彼氏との関係性が破綻しかけた頃、彼女は軽いDVを受けた。本来的な暴力ではなく、傷が残るものではなく、押さえ付けられたり、首を絞められたり。傷の付かない暴力

 だからこそ、誰かにそんな話を聞いて欲しかったのだろう。今になって分かるのは、彼女にとっては誰でも良かった、ということ。話し相手として、偶然に僕が選ばれただけで、しかし僕以外にも社交的な彼女は他の誰かにも同様の相談をしていただろう。

 僕は『誰か』に過ぎない。何人もいた『誰か』にしか過ぎない。

 彼女は、でも既に壊れていたのかも知れない。

 彼氏との関係が壊れてしまったとき、彼女は壊れてしまった。

 自分を傷付けるために沢山の男と寝た。

 身体目当てで寄ってくる男は、最悪だと思いながら、そんな男を抱く自分を最低だと感じながら、悲劇のヒロインを演じるために。

 なんで僕にそんな話までするのだろう? 僕は疑問を感じていた。だけど、答えが分かってしまえば単純で、それはきっと――僕が『誰か』だからだろう。

 話を聞いてくれるだけの捌け口だったからだろう。

 王様はロバの耳で、僕は彼女ストレスを緩和させてあげられれば良かった。そういう存在

 だから僕は彼女と会い、どんな話にも興味を持って耳を傾けた。

 僕はそんな毒にしかならない話を聞きながら、かわいそうだ、とか、不幸だ、とか、そういった感慨は抱かなかった。

 全ての結果には原因があって、それをなぞるのが僕たちの生きている世界だ。

 彼女自分を傷付けるために、そのためだけにその道を選んでいた。

 かわいそうでも、不幸でもないと思う。ただ僕は、いつしかそんな彼女を好きになってしまった。

 沢山の男と寝る女に?

 僕はそんな話を聞いても傷付いていない。だけど、おかしい。何故かそんな彼女を愛しく感じてしまった。

 僕はきっとおかしい。

 そして、あの冬が終わりそうだったあの季節。もうすぐ春が訪れそうだった世界で、僕の携帯彼女から一通のメールを受信する。

 残念ながらドラマティックな展開なんてない。これは現実だから。

 ただ彼女が『これから彼氏電話をして、しっかりと別れを告げようと思います』とだけ、僕に伝える。

 僕は彼女が傷付く要素が減れば、それは良いことなんだろうな、と何となく思っていた。だから『頑張って』と返す。

 彼女電話を終えて――深夜だ。夜中の3時くらいだった。彼女から電話がくる。

 彼女は泣いていたのだろうか? 辛かったのだろうか? ただ、少し涙声に聞こえる声で、精神的にやられてしまったんだろうな、というのは分かった。

 僕は、くさいセリフしか吐けない。きっと(これを読んでいる)あなたが聞いたら寒気がするような言葉しか伝えられない。少ない語彙で、彼女を励ましてあげることしか出来ない――出来なかった。

 君が笑っていてくれたら僕は嬉しい、だからいつも笑顔を忘れないで。

 そんな内容を、オブラートに包まず、長々と僕は伝える――伝えたんだ。本当はすごく会いたかったのに、君をもっとちゃんと励ましてあげられたら良かった。目を見て話したかった。

 僕は彼女が恋しくなる。

 いつも会いたいと思うようになる。

 それが、3ヶ月くらい前。

 そうしてまた何度か遊びに行き、飲みに行って、僕は酔っ払ったまま、彼女自分の気持ちを伝えた。

 僕は君が好きだって。

 雪は溶けて、季節は春になっていた。

 僕は優しく振られる。でも、それで良かった。このよく分からない曖昧な気持ちを、ちゃんと言葉にして伝えられて良かった。それだけで少し幸せだったんだ。

 彼女は優しいから、僕とはそれまで通りに接してくれる。僕は今だって彼女のことが好きだけど、だけど、本当に『この気持ちが』好きなのかどうかは分からない。

 彼女が他の男と肉体的な関係を持っても、別にどうでもいいと思う自分がいて、彼女が妻子持ちと不倫をしているのを僕に告げても僕はどうでも良くて……それは本当に好きなのだろうか? これって、好きっていえる?

 こういう感覚は、よく分からない。

 僕が昔、ルームシェアをしていた本当に救いようのない不倫をしていた女を好きになった時も、その好きだった子が堕胎しても、僕があの子を好きだったあの頃のように。

 世界を悲観して精神を安定させるために恒常的なリストカットを続ける別の女を好きだった時も。

 全部が全部、それは副次的な要素として完結していると考えてしまう僕の気持ち。

 頭でいくらおかしいと理解していても、心が付いていかない。どこか遠くに離れている。

 今好きな彼女を、好きだっていえるけど。これは好きと違うのかな。ただの同情なのかな。

 彼女を抱きたいとも思わない。直截にいえば、セックスしたいとか思わない。

 だけど、ただ抱きしめたいと思う。

 この感覚が、一体なんなのだろうと、僕は考えている。

 だけど君にとって、僕は『誰か』であり続けるのが正しい。

 これからもそうしようと思う。

 君は君で、僕は他人だ。ただ曖昧感情を抱いているだけの、壊れてしまった人間なのだから。

P.S.

 出来すぎた話だが、これを書き終えた今、彼女から電話を受けた。

 すこし辛い気持ちになってしまった。

  • 傷持つ人を好きになるのは、自分が優越感を感じたいだけ 長文なのはそれを悟られまいとごまかしてるだけ

  • 早い話、あなた悲劇のヒロイン相手にヒーローごっこするのが好きなんじゃね? メンヘラしか好きになれない人だけど、童貞ではないんだよね? 今回はたまたまそういう関係にならなか...

  • 単純に、欲望と行動が直結してる人が羨ましいだけじゃないの? 自分が感情を抑えて、先まで考えて動くタイプだから。 世界に対して、自分の感情で向き合って、傍から見れば馬鹿げた...

  • なにもかもがキモイなお前。 恋愛スタイルもキモいし 文体もキモイ。 相手にとっての正しさを勝手に決め付けるところとか最低だよな。 まあお前が相手にとって「誰か」に過ぎないの...

  • 身も蓋もない言い方すれば、そういう関係を「共依存」というんだ。元増田も相手は誰でもいいんだよ。「自分を傷つける人間」でありさえすれば。相手を癒す人間で有り続けようとす...

  • 付き合ったことのある人3名全員から付き合ったあとで「俺の前の彼女死んでるんだ」と言われたわたしが来ましたよ

  • 共依存ってやつかしら。

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん