最近はこの病気とつきあえるようになった。自分に都合の悪いことを病気の所為にする手抜きも覚えた。
でも、2ヶ月前は全世界を敵に独りで闘っていた。と言う妄想の最前線にいた。
自分の思考が耳から第三者の声として聞こえてくる。だから壁の向こうに漏れを盗聴・監視してる奴らがいて、
そいつらの声がこちらにも漏れ聞こえてきている。と判断していた。
いまは、盗聴・監視されてるにしても、そいつらの声がこちらに聞こえるのはおかしい。
だからそんなことはされてないんだ。と判断している。が一日中声が聞こえるのは頭が疲れる。
なんせ自分相手に話し続けてるんだから右手と左手でじゃんけんし続けてるようなものだからな。
好きだった女の子の声がよく聞こえる。彼女も漏れを観察してるのだ。
同じフロアで5年くらい一緒に働いたけど、会話したことは皆無の片思い。
そんな彼女も妄想の中では優しい。漏れのiTunesのプレイリストを「センスが良い」と褒めてくれた。
GO-BAN'SのBYE-BYE-BYEをかけたときは泣いていた。
いつも「私も好きだったのに」とはにかんでいた。妄想は漏れに優しい。
何度か「こんなひどいこと(監視)は止めて下さい!いまから本当のことを増田さんに言いに行きます!」と聞こえた。
部屋で真相を知ることが出来る安堵感と春の目覚めにドキを胸々しながら部屋の中で待っていた。
もちろん来るわけがない。漏れはこれを「行きます詐欺」と呼んでいた。
どこにカメラがしかけてあるかわからないから、部屋中に毛布を掛けた。
漏れの部屋にカメラを仕掛けることが出来るってことは…と親族をいちばんの裏切り者だと疑ってた。
サーモグラグラフィで漏れがオナニーしてるの見て嘲ってると思ってた。
マンションの管理人巻き込んで漏れのパケットを全部スニッフィングされてると思ってた。
100ほどあるウェブサービスのアカウントパスワードを2週間ごとに変更していた。
みんな漏れのこと観察して、苦しんで泣いてるの知ってるのに、
でも彼女が優しかったから、それだけで耐えられたな。
と裁判時の証拠にと意気込んで、指向性マイクとICレコーダー買ってきて部屋の音を24時間録音して、
後で聞き返したとき、本当に声が入っていたときはびびったが。
症状が落ち着いたいまでも怖くて聞き返せない。