2010-01-20

では、何のための3年間だったのですか

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鳩山首相JASRAC記念式典の挨拶で、「保護期間の70年延長に最大限努力する」と発言しました。首相発言は、居並ぶ国際的な著作権団体のトップ、与野党議員ほか各界代表者を前におこなわれ、川端文科相も20日の閣僚後会見で延長に意欲を示しました。

米国保護期間延長を外交要求する中、国内の権利者団体が、現在「著作者の生前プラス死後50年間」である保護期間を、さらに20年延長するよう求めたのが2006年。その前後にはクリエイター研究者などからなる当フォーラムが発足して、慎重な検討を求めたほか、日弁連青空文庫など、さまざまな関係者が延長に反対の声をあげました。

2007年には文化審議会の中に「過去著作物保護と利用に関する小委員会」(保護利用小委)が発足しましたが、延長への賛否で意見は大きく割れ、30人もの各界関係者へのヒアリングでも延長への懸念が続出しました。

延長を求める権利者団体はその理由として:

欧米が死後70年である以上、それは世界標準である

・死後70年への延長は創作者の意欲を高める

・国際的に期間を調和させないと、作品の国際流通が害されるおそれがある

・作品の利用許諾が難しくなる点は、大多数の作品を網羅する権利情報データベースの構築で解決できる

などの点を挙げました。

これに対して私たちは:

・更に20年延ばしても、経済的に受益するのはごく一部の作品だけではないか

・むしろ、古い作品の権利処理には過大な負担を要し、死蔵作品が増えるのではないか

・延長は欧米の一部権利者を利するのみではないか

・古い作品に基づく、無数の新たな創作の泉を枯らすのではないか

などの問いかけをおこなって来ました。

2009年保護利用小委では、「著作権法制全体として保護と利用のバランス調和のとれた結論が得られるよう、検討を続ける」として、延長を事実上見送る報告を著作権分科会に提出しました。

そして、著作権法制全体のあり方を話し合うために、さる4月、基本問題小委員会が立ち上がり、議論がはじまった矢先での今回の発言です。

基本問題小委員会がまだ中間報告すらおこなっていない段階で、酒宴の挨拶で、「欧米並みにすべきだから」という理由で発表される70年延長とは何なのでしょうか。それは、立場は違えどその信ずるところをお互いにぶつけあって来たこの3年間の議論をどうくみとり、生かしたものだというのでしょうか。

今後、基本問題小委員会などの場で、著作権法のどのような未来像が示されるのか、網羅的な権利情報データベース現実に構築され、権利処理の問題がどう解消されるのか、実際に見さだめたうえで、はじめて保護期間の延長は議論の俎上(そじょう)にのぼるべきものです。

そして、その是非を決めるのはひとり首相や文科相ではありません。このことは、華美を尽くした式典の檀上に議員や団体の長が何人あがろうが、変わりません。 それを決めるのは、皆さんです。そしてこの決定を見つめるのは、明日の時代を生きる私たちの子供たち・孫たちです。

情報社会未来のためにどのような決定をくだすのか。私たちには、彼らへの責任があります。

think Cは、今回の一連の発言のゆくえを注視し、今後、必要なすべてのアクションをとっていきます。皆さんの支援が、頼りです。どうぞこの問題をひとりでも多くの方に伝えてください。なお、本コメント転載自由です。

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