2008-08-10

14歳の君へ。

プロローグ

もしこの文章を読んでる君が14歳だったら、まず最初に伝えたい事があるんだ。これはとても傲慢で自分勝手なのかもしれないけど、僕が君の歳のとき、こんな亊を言ってくれる大人が側に居たら、寄り道なんてすることはなかったかもと思って、今書いてるところなんだ。

君にはもの凄く一方的に移るかもしれないし、説教臭く聞こえるかもしれない。もしかするとピンと来ない話かもしれない。それでもどうか、最後まで読んでくれれば。

人を信頼するということ

まず、最初に告白しておくと、僕は未だに人が怖い。だから今でも人付き合いはどちらかというと苦手なんだけど、それでも僕は人を信頼している。

君には変に聞こえるかもしれないね。でもこれは僕の偽らざる本当の気持ちだ。でも反対に君は内心、周りの人間小馬鹿にしているかもしれない。

もっとハッキリ言えば、周りの人間を見下しているのかもしれない。そして世の中は下らないなんて、本気で思っているかもしれない。

確かに、ある意味ではそうなのかもしれない。

お世辞にもこの世は素晴らしいことばかり、なんて言える自信は僕にはないし、保証なんてする気はサラサラない。その言葉はある意味では真実だ。

でもちょっとそこで結論付けてしまうのは待った方がいい。

僕が小さかった頃は、自分の行動範囲でしか周りを見ることができなかった。

小さい頃はせいぜい歩いて10分が行動範囲だったし、自転車を乗れる様になってからは大体町内とか市内が行動範囲。それ以外を知るとなると、テレビとかで受動的に知るしかなかった。

当然ながら、会う人、話を聞ける人も物理的な制約に制限されてた。

でも今はどうだい?今は違う。君はある意味では恵まれている。ネットがあるからね。世の中は全然下らなくなんかない。

例えば、はてなとか覗いてみたら、凄い記事とかゴロゴロ転がっているし、ニコ動とかでも凄い動画はたくさんある。他にも凄いものを作っている人はいっぱいいる。

これを見て、読んで、聴いて。それでもまだ人は下らないなんて言うつもりかい?

こういうのを作ってる奴らが何も聖人君子であるとか、そういう事を言いたいわけじゃない。違うんだ。君と同じなんだよ。かつては君と同じ14歳だったんだ。

知らない人をあまり無闇に信用しないというのは、果たしていいことなのかな?そんなに人間ってどうしようもない生き物ものなんだろうか?

これが簡単に答えられる類のものではないのは重々承知している。しかし何にせよ、まだ早急に結論付けるのはあまりに早すぎるんじゃないかな。

君はもっと人を信頼していいと思うんだ。中にはどうしようもない奴だっているかもしれないけど、それでも世界は凄い奴がゴロゴロ転がっている。

社会ってなんだろう

君は親父とかの働いている所を見たことがあるだろうか。僕は一度もない。

僕の知ってる親父は、朴訥で、やたら子煩悩で、休みの時は必ず息子を連れて登山に行くような人だった。けど僕は親父が具体的な仕事の話をしているのを聞いた事がないし、働いている姿も見たことが無い。

有りがちな話だけど、子供のころは社会を知ることが無かったんだと思う。

社会と言えばそれは例えば、新聞の中に書いてあるような事だけだった。他の大人達の働く話なんて、全く聞く機会もなかった。

そういう意味で、なるべくして良く言えば純真に、悪く言えば物を知らずに育ったのかもしれない。

これが果たして僕にとって良い事だったかと考えると、必ずしもそういうわけじゃないんだ。むしろ、もっと知っておけばよかったって。

大人の世界を知っておいて悪いことなんてない。君もいずれは大人の世界に身を置くことになるんだからね。

学校の中だけが全てじゃないんだ。当たり前じゃないか、って君は思うかもしれない。でもこの事は体感する必要があるんだ。

学校世界は、数ある内の一つの世界に過ぎない。そこに居場所を確保しようとするのは、決して悪い事だとは言わない。でも、のめり込みすぎてもいけない。

抽象的な物言いをすれば、過剰適応となるだろうか。学生時代の友は一生の財産にもなりうる。でも学校だけで君の人生が終わるわけじゃないんだ。その後も広大な世界が君を待ち受けている。

その事を決して忘れてはいけない。怖がらせるようですまない。そんな先の事なんて考えたくもないって思うかもしれないね。

でも政治家みたいにそういう事を先送りにしておくと、碌な結果にならない。じゃあどうすればいいのかって君は思うに違いない。

実際学校社会はあまりにも遠い。これは僕達大人の責任でもある。

でもそんな風に不平を言ったって仕方がない。とりあえず僕はネットで大人の世界を知る事をお勧めする。世の中には色々な人が居ることが分かると思う。

僕が子供の頃と違って、ほとんどの人が何らかの形でネットを使っているし、そこでは色々なコンテンツが作られている。

例えば君はサラリーマンなんてどれも変わらないって思ってるかもしれないけど、普通サラリーマンだって千差万別だ。

とにかく数えきれない程の職業に従事している人が居て、又数えきれない程の生き方がある。ちょっと探せば、すぐにそういうのは見つかるはずだ。

是非そういうのに触れて欲しい。職業だけじゃない。世の中に起きている色んな問題に首を突っ込んでみようよ。知らない世界を知るっていうのは、想像以上に面白いことなんだ。

別に今から就職活動を始めるとか、社会参画するとか、そういうスケールの大きい話じゃないんだ。

ただ、君がそうして触れた生き方は、君が真剣に将来を考えるようになると、多分凄い助けになるだろうから。

言葉の持つ力

これは必ずしも必要ないのかもしれない。ある種の生き方には不要なのかもしれないけど、それでもやっぱりできれば、身につけて欲しいと思う。

君はもしかしたら、学校テストでは高得点を取れるかもしれないし、それさえできれば問題無いって思ってるかもしれない。

それも大切だ、確かに。でもそれだけじゃ、自分の意見とかが言えない、そういう状態になってしまう。

自分の言葉を持つことは、大切な事だと思うんだ。極端な話、学校では、自分の言葉なんて持たなくても、やっていける。

でもそれは学校だけでの話だ。前にも言ったけど、学校の後にもそこに茫漠と人生って奴は横たわっているんだ。

そこでは自分の言葉が無ければ、自分がどんな人間か伝えるのに、苦労する。結構シビアな所なんだ。だから今の内に磨いておいた方がいい。

でも、どうすればいいかって言っても、自分の言葉というものはそんな直ぐに身につくものじゃない。長い研鑽の果てに身につくものだ。

こう聞くと何だかとても辛い事の様に思えるかもしれない。でも、そんなに複雑な事ではないんだ。これは今からの君の心がけの問題だ。

今から言う、二つの事に気をつければいい。それは、問いを立てて考えること。色んな言葉に触れる事。それだけだ。

何も難しいことじゃないけど、なかなかこれをしようとしない人って多いんだ。

中でも問いを立てる事は凄く大事だ。「どうしてこうなるんだ」と問いかけないと、自分の世界は広がらない。それを真摯に考える事だ。

中には考えても、なかなか自分の中に腑に落ちる答えが見つからない事だってあるかもしれない。でも、決してそこで歩みを止めちゃダメだ。

全ての問いに答えが見つかるなんて考えるのは馬鹿げている。学校テストと違って、答えの見つからない事の方が多いんだから。それでも考えるのを止めないこと。

そうやって自分の中の問いを大切に扱う事。そして、色々な言葉に触れること。音楽でも、映画でも、漫画でも、本でも。そこに言葉は溢れている。

そこにある考えとか、思いとか、どんどん取り込む事だ。そういう事を続けていると、いつのまにか、自分の言葉で語る事ができるようになる。

これには時間がかかる、確かに。でもそうして自分の言葉を形作る事は、とっても愉しい事のはずだから。

自分の感覚を信じる事

ネットは広大だ。その意味を僕が肌を持って体感するのは、いわゆる普通のレールを踏み外して、ドロップアウトしてからの事。

それからPCに触れる時間も増えていったし、そういったブログに触れるのは必然だったのかもしれない。ともかくネットで色々な物に触れた。

そうして莫大な量の情報に触れる事で、自分の感覚とか、志向とかがどこに向いているのか、少しずつ分かってきたように思える。

必ずしも僕みたいなやり方で無くても構わないけど、そうして莫大な量の情報を得て、そうしてから、将来どうしようとか、これからどうすればいいのかなって考えるのも遅くないと思う。

君の周りの親が進学しろっていうのはそういう風に受け取って構わないと思う。決断は後回しにできるのなら、後回しにして、色んな事を知ろうとするのは、決して悪くない考えだと思う。

それから、面白そうっていう自分の感覚を決して見逃さない事。面白そうなんだけど、周りの目が気になって、中々やり始めるのを決められないかもしれないけど、自分の感覚の方がずっと大事。

誰々がどう言ってたからで自分のやる事を決めない事。自分はこれが面白いって思うから、これやってみるとかでいいんじゃないかな。とにかく、惰性に流されちゃダメだ。つまらないと思ったら止めてもいい。

真面目になりすぎなのもよくない。例えば好きな異性がやってたのを自分もやってみるとか、かっこ良さそうとか、モテそうなんて動機で何かを始めるというのでも全然構わない。フィーリングとかで決めちゃってもいいんだよ。そういう風に自分の感覚を大事にして、色んな事に触れてみるんだ。

当たり前だけど、14歳の君は二度と戻ってこない。ものごとを知らないって言うと、バカにされたりする事もあるかもしれないけど、決して悪い事ばかりじゃない。

そうした状態だと、初めて見る物事が全て鮮やかに見えるから。

そうして手に入れたものは、君が僕の歳になった頃には、大切な宝ものだと思えるようになっているはずだから。

終わりに

どうかな?伝わっただろうか?伝わっていたらいいなあ。僕だって大人として、上手くやっているというわけでは決してないけど。

それでも、時々考えるんだ。もっと上手くやれていたらって。

僕はあっちこっちぶつかって大人になっていったけど、そんな不器用にやっていくよりも、君には上手くやって欲しいって思うから。

素敵な14歳の夏を。

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