2008-05-23

マスメディアへの違和感 エロゲー議員問題について

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0805/23/news147.html

Itmediaに『「エロゲー人間性失う」 規制求め請願 円議員掲示板に批判数百件』という記事が載っていた。

民主党参院議員が、エロゲー青少年の心を破壊するから幼女誘拐事件が起きるって国会で主張してるんだってさ。

ま、何をアホなと思うが、それはどうでも良い。

気になるのは、その下に書かれているItmediaの捕捉情報だ。

警察庁のまとめによると、平成19年に摘発した児童虐待事件は前年比1%増の300件、わいせつ画像を撮影されるなどの児童ポルノ事件の被害に遭った児童(18歳未満)は同20.2%増の304人で、いずれも過去最悪になっている。アダルトアニメゲームとの関連性は不明だ。ネット上では児童ポルノなどの規制に関する議論がこれまでも数多くなされおり、今回の請願についても大きな反響を呼びそうだ。


これって、何か関係のないものを持ってきてはいないか?

というわけで調べてみたら、関係の疑わしいデータ、または全く関連性のないデータを「関連性は不明」と但し書きを書きつつ載せていることがわかった。

どんなに「関連性は不明」と書いても、同じ情報抱き合わせで提供されたら関連性があるように感じてしまう。

メディアによる刷り込みの常套手段と言えるし、卑怯な手段として非難されてしかるべきことだ。

僕はItmediaを信頼できるメディアだと思っているし、準児童ポルノにも果敢に異を唱えているところが好きなんだけど、こんな報道をされれば幻滅だ。

猛省を願いたい。

捕捉1:産経新聞の配信記事との指摘がありました。産経はあまり信頼していないですが、やっぱり猛省を願いたいと思います。

捕捉2:予想外に注目されて驚き。表現を加筆修正。

最初に書かれているこの記述について。

児童虐待事件は前年比1%増の300件

どう読んでも、「児童虐待」についての記述としか考えられない。

児童虐待って、子供に対する家庭内暴力で、あの母親とか内縁の夫とかが子供を虐める話でしょ?

どう考えても、エロゲー関係ないだろうと思う。

詳しい記事を調べてみた。

毎日新聞の記事

http://mainichi.jp/life/edu/news/20080221dde001040005000c.htmlでは、

児童虐待の被害児童315人の態様別では▽暴行、傷害などの身体虐待224人▽わいせつ行為など性的虐待69人▽育児の怠慢、拒否22人。年齢別では1歳未満が47人▽5歳児25人▽3歳児24人????など低年齢の児童の被害が目立っている。

虐待加害者被害者関係では、実母による犯罪が97人で最も多く、実父91人▽養・継父55人▽内縁の父46人など。


児童虐待」とは、簡単に言えば最近話題になっている親の折檻などを指す。

報告されている限り加害者も身内の人間であり、「児童に対する家庭内暴力」のデータである。

これを読んでみても、どうしてもエロゲーに毒された青少年が関連しているとは考えられない。

検挙件数が増えたものの死者は減少したことについて、同庁は「児童虐待社会的に知られるようになり被害通報が増える一方で、児童相談所などとの連携が強化され、対応が迅速になったためではないか」としている。


警視庁の分析もエロゲーなどまったく意識されていない。

やはり、この記事で「児童虐待が増加している」と捕捉するのは無理がある。

次に、この記述について

わいせつ画像を撮影されるなどの児童ポルノ事件の被害に遭った児童(18歳未満)は同20.2%増の304人


気になるのは、児童ポルノ被害者が18歳未満でくくられているということ。

議員の請願では、以下のような内容が発言されている。

美少女アダルトアニメ雑誌ゲームの製造・販売の規制法制定に関する請願」で、「街中に氾濫(はんらん)している美少女アダルトアニメ雑誌ゲームは、小学生少女イメージしているものが多く、このようなゲームに誘われた青少年の多くは知らず知らずのうちに心を破壊され、人間性を失っており、既に幼い少女が連れ去られ殺害される事件が起きている」と指摘。「幼い少女たちを危険に晒(さら)す社会をつくり出していることは明らかで、表現の自由以前の問題である。


ここで触れられているのは、「小学生少女」に対する性的虐待が問題だと言うこと。

世界的な風潮でも「児童ポルノ」問題で重要視されているのは12歳以下だから、この発言が「小学生少女」に限定されていることは問題ない。

そうなってくると、やはり児童ポルノのうち、小学生被害者がどのように推移しているかが気になる。

詳しいデータを探してみた。

http://www.en-ichi.org/pubs/thismonth/216-4infile.html

2000年から2007年児童ポルノ事件の検挙数と、被害児童の内訳が載っている。

問題となる小学生被害者数をみてみよう。

2005年 - 31人、 2006年 - 38人 2007年 - 33人

若干の増加?と言えるか微妙なところで、これだけのデータでは判断できない。

なにより前年比で減少しているし、「大幅に増加」という状態ではないということがわかる。

児童ポルノ被害者の増加分はほとんど12歳以上、というより女子高生。)

また、気になるのは、児童ポルノ事件の検挙数が、2006年から2007年にかけて減少していること。

被害児童は増加しているが、犯罪検挙数は減少している。

この減少についても、報道姿勢としては触れておくべきではないかと思われる。

それと、この統計が「検挙した事件」で露呈した事実であることもきちんと認識しなければならない。

警察が重点的に捜査活動を行えば検挙数は増えるし、被害者も増加する。

発覚していない被害者が実は大量に増加している可能性もある。

とにかく、実際の被害者の数ではないということ。

まとめると、このように言える。

児童虐待データは主に家庭内暴力

児童ポルノ被害者のうち、小学生被害者は大幅に増加しているとは言えず、前年比でも減少している。

この2点より、今回提示された補足情報は、円議員の「エロゲー小学生少女の性的虐待を助長している」という請願とは何ら関係がないと判断できる。


今回は、グーグルを使って5分ほど検索を行い、補足情報が妥当でないと判断した。

(文章を書くのにはずっと長い時間がかかったが。)

たった5分でわかる公開情報を調べもせず掲載するのは、報道としての責務を放棄していると私は思う。

この補足情報に対し、私は完全に記者エロゲーに対する悪意を感じた。

公正な情報を伝えるべき新聞報道において、唾棄すべき態度である。

ニュースにおいて記者の考え方は排除できないものだけれど、結論ありきで記事を書くことは止めて欲しいところだ。

  • ITmediaが書いた記事じゃなくて、産経新聞からの配信記事だよ。右上に「産経新聞」ってロゴが載ってるでしょ。

  • 同意。5分で調べがつくことを検証もせず「…と思われる」と書いてすまししてる人間はジャーナリストでなく単なる戯文屋、売文の輩。本来、この世にいなくてもいい類の職種の人間。...

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん