http://anond.hatelabo.jp/20071129184748
世の中自分以外バカばっか、生きる理由なんてないけど死ぬのも面倒なので生きてる、みたいな。平凡な大人を軽蔑していて、周囲の人間を全員見下している(ここにいずれ自分も平凡な大人になるだろうという絶望が加わってたり加わってなかったり)タイプ。文化祭に盛り上がっているクラスメイトをちょっと離れたところから嘲笑してるタイプというか。大人な自分かっこいい。厭世的な自分かっこいい、みたいな主人公。
いや、だからそういうことでしょ。
世界の終わりなんてわかんないしどうだっていい。俺はこいつの○○だから最後までいっしょにいる。
調子に乗って書いちゃえばら焼肉のたれ
「そういうわけで、さぁ二人で魔法の国に旅立ちましょう」
そういうと、それまでお嬢様風ワンピースだった女はにっこりと笑った。同時に足元から光の輪が舞い上がり、すっと彼女を包む。いや、なんというか輪くぐりをするんじゃなくて、輪が彼女を足元から通り抜けるような、そんな感じ。
「まさか…」
「分かっていただけましたか?」
若干古風なそのいでたちは、紛れもなくファンタジーゲームの魔法使いの姿だった。
「そんな…まさか…」
此れまでは、話半分どころかほとんど信じちゃいなかった。ちょっとイっちゃってる系の女。でも、美人だしちょっとうれしいかなっと思って話していただけ。それが突然、生々しい現実感を伴ってやってきた。鳥肌が立った。
「先ほどの失礼な言葉をお許しください。どうしてもこの世から国へお越しいただき、妖魔どもをなぎ払っていただきたかったのです。私はそのために選ばれ、使わされた魔法使い。勇者様である貴方と共に戦う者です」
「いや、待てよ!俺はなんとも言ってないぞ」
「お願いです!われ等の国をお救い下さい!」
心なしか、彼女は悲しげだった。これまでの暮らしでは話すことすら想像できなかったような美女。その美女が俺に懇願している。共に来て、戦えと。勇者となって妖魔を倒せと。
「…無理だよ」
「…え」
「無理だよ、俺、38にもなってニートだよ、職にも就かず、教育を受けるでもなく、訓練を受けてもいないただのだめ野郎だよ。辛いんだよ、苦しいんだよ!もう十分だよ、何が戦いだよこれ以上俺の人生苦しくしないでくれよ!」
涙が出てきた。立っていられなかった。その場にへたり込んで。泣いた。悔しくて、悲しくて、こんな目に合う自分が、こんな人生を送ってきた自分が哀れで。声を上げて。何年ぶりだろう。声を上げて泣くなんて。ずっと声を押し殺して泣いていた。学校へ行けといわれたときも、就職しろといわれたときも、首だといわれたときも、声を押し殺して泣いた。
「残念です」
嗚咽が停まらない。
「一緒に来てくださると思っていました」
「ごめん」
「お気持ちは察します」
沈黙があった。しばらく二人とも黙っていた。
「で、僕が行かないとどうなるの?」
やっと振り絞った言葉は、ささやくような声にしかならなかった。
「わが国は、妖魔に食い尽くされるでしょう。家も、畑も、山も、海も、空も。」
何もいえなかった。
「私の父と母も」
「ほかの人に当たってよ」
「できません。貴方を予言の岩が選んだときから、われわれの命は貴方にゆだねられたのです。私の身も心も。」
何だって?
涙でぐしゃぐしゃになった俺の顔はさぞかし醜かったろう。しかし、その醜い顔を持ち上げ、俺は口を開けたまま彼女の顔を呆けたように見た。
彼女は優しく言い聞かせるように微笑んだ。
「もう一度伺います。来たりて、われ等をお救い下さい」
また涙が流れた。声がかすれる。
「…ごめん。できないよ」
彼女が悲しそうに無言で微笑んだ。
「どうするの?」
「仕方がありません。勇気と共に降臨して下さるのが望みでしたが」
彼女が少し間をおく。
「無理とあらば力ずくで来て頂くまで」
え?
「嫌だ、絶対行かない」
首を振る。嫌だ。命を懸けるなんて嫌だ。怖いのは嫌だ。仕事がなくてもいい、もてなくてもいい。この世界にいたい。
「そうおっしゃると思いました。嫌々来ていただいても妖魔退治にならないのは承知のうえです。しかし。」
しかし?
「帰る国がなければ勇者様とて腹をくくって下さるでしょう」
決然とした表情で彼女が言う。
違うよ。
最初からヒロインを選んでるんじゃなく、