互いに三十路も越えた兄妹だがもう何年も話していない。
兄は親を無下にしてきたしそういう姿に心底呆れてもう他人以下と思うことにしていた。
わたしは家を早々に出て一人で暮らしていたから、いい歳して実家に寄生し働きもしないニートの兄がつくづく気に入らなかった。なにより憔悴していく母親がかわいそうでならなかった。
昨年、母親から朗報が届いた。「お兄ちゃん、就職するって」と。安堵した。これで大好きな両親がのびのび生きていける。あの疫病神は去ったと思った。現に今年の正月に帰省した時は本当にのんびり過ごせた。母親も、なんだか若返ってキレイになっていた。
ああ、なのに、縁を切ったと思っていた兄から連絡が入った。「職場が近いから来い」と。
こわい。超こわい。
なによりそんなこという人ではなかった。他人を見下し家族をないがしろにしているひとがまさかたかが妹に連絡するものか。
ああ、こわい。でもお兄ちゃんが連絡をくれたのは嬉しい。でもこわい。また蹴られるかもとか思うと超こわい。
なんで年上のきょうだいってこんなに怖いんだ。
何か理由つけて、外で会って食事でもする方向に持ってけない? 人目があれば蹴られたりする危険は減りそうだからさ。