2009-08-04

「秒速」で鬱(最後までネタバレ)。

http://anond.hatelabo.jp/20090803105004を書いた者です。

なぜ「秒速5センチメートル」で落ち込むのかということについて(http://anond.hatelabo.jp/20090804001253からの質問)。

一言でいえば、「物語の中でくらい夢を見させてくれ」ということになる。以下、くどくどと語る。

この人(http://anond.hatelabo.jp/20090804010932)が勘所を書いていてよくまとまっている。

物語をみるって言う事は特別な状況を求めることだということ

まずこれが前提にある。ほとんどの物語というのは「桃太郎」から「インディージョーンズ」まで、「困難を乗り越えて幸せを得る様子」が描かれている。どのような「困難」を、どのように「乗り越えて」、どんな「幸せ」を得るかというところを変えていけば、ほとんどの物語カバーすることができる。ここで勘違いしてはいけないのは、「幸せを得る」という部分が肝なのではなく、「困難を乗り越える」ところが肝だということだ。

要するに、物語の中に出てくる困難は必ず乗り越えることができる。これが大前提だ。

「秒速」の話でいえば、主人公の男の子女の子小学校中学校時代によい関係にあったが、転校により遠く離れてしまう。男の子はそれでも女の子を想い続ける。この時点で物語の文法としては、「遠く離れても(=困難)」「きっと恋は成就するはずだ(=乗り越えて幸せを得る)」と予想される。ところが、最終的に大人になったその女の子は別の男性結婚する。つまり、提示された困難を乗り越えることができていない。そればかりか、高校時代にはみんなから将来を期待されていた主人公の男の子は、勤め人であることに疲れてフリーランスSEとなる。

物語の中でくらい夢を見させてくれという視聴者の期待を「秒速」は見事に裏切る。つらい現実から逃れようと思ったら、まざまざとつらい現実を見せつけられる。世の中そう簡単にうまくいくはずがないという現実は分かりきっているからこそ物語を見ているのに、「秒速」はあらためて「世の中うまくいかないよ」と語る。落ち込む。

私以外の「秒速で落ち込む人たち」も、そのような感じで落ち込んでいるんじゃないかと思う。とりわけ、青春時代恋愛環境が人並みであり、社会人になってから(あるいはその年齢になってから)社会的に苦しんでいる人はそういう見方になると思う。逆に、青春時代恋愛環境が劣悪だった人は、多分、この映画を見て「ざまあみろ」という気分になれるんじゃないかと思う。

KIDS RETURN」もだいたい同じで、「世の中うまくいかないよ」と語る。ただし、こちらの映画は確か男子校だったはずなので、恋愛トラウマのある人でも見られると思う。

ところで、「耳すま」「時かけ」を見て落ち込む人というのは、「俺の知らない間にみんなこんな楽しい世界にいたのか」と打ちのめされるのだと思う。では、この二つの作品で打ちのめされない人がどう見るのかといえば、「(前述の物語の文法に則って)主人公たちが困難を乗り越えることができてよかったなあ」と幸せな気分に浸るだけであり、そこに描かれている「最初から(あるいは中盤から)男女の仲がいい状態」については、特に気にせず、そういう話なんだと思って見るだけだったりする。

記事への反応 -
  • http://anond.hatelabo.jp/20090802001622 「みみすま」「ときかけ」「さまーず」を見て落ち込む人がいるらしいが、私としてはその三つの映画よりも「秒速」「KIDS RETURN」の方が落ち込む。きっと...

    • 「さまーず」を見て落ち込む人 元バカルディを見て、何で落ち込むのかと少し考えてしまった。

    • どうして鬱になるのか教えて欲しい。 http://anond.hatelabo.jp/20090803171816 http://anond.hatelabo.jp/20090803105004

      • あれは物語の構図が過去の思い出を思い出し感傷を呼び起こすようなものだからだと思う。 だれだって程度に差はあれど小、中で一度はこれは恋なのかと思うような感情を持った事はあ...

        • だれだって程度に差はあれど小、中で一度はこれは恋なのかと思うような感情を持った事はあるだろうし 高校時代には偶然帰るタイミングが合えば電車で降りる駅まで話をしながら...

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん