2009-01-18

1月17日という記念日

自分の友達に、自殺志願の少女がいる。

彼女は「1月17日」と記せば誰もが思い出す地震被災者で、両親は自分の足で立つこともできない娘を遺して亡くなった。

その友達が、“奇跡”と共に残った自らの命を捨て去ろうとするに至った経緯を書き残すと共に、自分自身が思い悩んでいることを打ち明けることで少しでも心を軽くしたい。

俺と彼女が知り合ったのは6年ほど前、ともに小学4年生の頃。関西生まれの転校生と、関西生まれの在校生出会い

転入したクラスで親密になった友達は男子1人と女子2人の計3人で、その中でも件の彼女とは不思議に気が合い、人に打ち明けにくい悩みを相談できる貴重な異性として、互いを大切に想ってた(と思う)。正直ちょっと顔が赤くなる。

“打ち明けにくい悩み”といっても大半は歳相応に他愛のないもので、高校生になった今では「あんなバカバカしいことを真剣に悩んでたのか…」と恥ずかしくなってくるほど。

それらのほとんどは相手と共に考えることで解決させることができたんだけど、ただ一つだけ、どう悩み抜こうと答えが出なかった問題がある。それが、彼女の話した自らの過去に関するもの。

神戸灘区に住んでいたらしい彼女の一家は、彼女が2歳になる前に地震に遭い、二人の親と、母親の中にいた“一人”の弟妹が命を落とした。

たった一人遺された娘は、母親の妹(か姉かはハッキリしないけど)夫婦に引き取られ、母親の出身地、九州に移り住んでいる。

きっと、関西から来た転校生として、「他の友達より真剣に耳を傾けてくれるかもしれない」と思って打ち明けてくれたところもあったんだろうと思う。

しかし俺は関西と言っても大阪生まれ、なじみの薄い神戸の話に特別な思いを抱くことはできず・・・(我ながら最低だ)

あえて自己を弁護するならば、とにかく「親がいない」という事実が衝撃的で、話の詳細を考える余裕が無かった、ということだったのかもしれない。

九州に転校して2年後のこと、元いた大阪小学校に再び転校。

それからは年に1、2度ほど会うことがあるのみとなり、電話メールといった手段での連絡は一切なし。

伝えるべき事柄もないし、たぶん単に面倒だったんだろう。以後5年間、ほんの最近までそんな関係だった。

変化が起きたのは去年の11月、連絡先も伝えていないはずの彼女からかかってきた突然の電話。(連絡先は男の友達から聞き出したらしい。伝えたことを忘れていた。)

とにかく話がしたくて電話をしたとは言うものの、しばらく喋ってみても彼女の話したい事柄が見えてこず。

とりあえずその日は電話を置くことにし、後日改めて会いに行くと伝えることで彼女を落ち着かせることに。

12月下旬、冬休みの始まりと同時に九州へ向かった。

久しぶりに見た彼女は随分と思いつめている様子で、会うなり突然泣き出しそうな雰囲気すら感じられる悲痛な姿。

他の友達連中と楽しく過ごすふりをしつつ、何が彼女をそこまで追い詰めているのかを全身全霊で突き止める決意を固めたりしたのだが、その原因はあっさり彼女自身の口から語られる。

それは、もはや忘れかけていた、地震の話。

夢を見た、と彼女は言う。生みの親の死に目に遭いながら何もできず、ただ泣いていただけの自分の惨めな姿を目にした、と。

出来事以後の13年間、一度たりとも、そんな悪夢はみたことが無かったのに、私は見てしまった、と。

どう接すればよいのか分からなかった。何だこの話、なんだよこれ。

今まで自分が生き残ったのは全くの偶然だと思っていた、運命のいたずらで、仕方がないことだ、と。

しかしそうじゃなかった、自分が生きているのは両親のおかげだ、両親が身を挺してくれなければ私は確実に死んでいた、と。

そんなことも知らずに「私はあの時どうして死ななかったんだろう、死んでいれば楽だったのに、死んでいたかった」なんて考えていた自分が許せない、と。

「生き残ったことへの罪悪感」と、「生き残らせてくれたことに感謝してこなかったことへの罪悪感」。

二重の重圧に耐えかね、必死に苦しみから逃れる方法を考え続け、出してしまった答えが、死ぬこと。

この問題は未熟な高校生が悩むには難しすぎるのだろうけど、彼女自身が死に代わる答えを見つけなければいけないことは確かだ。そして俺は、その答えを探す手助けとしてできることを見つけたい。

新年度から彼女と同じ高校の生徒となる。

それまでに、何としても。

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  • 1月17日という記念日に http://anond.hatelabo.jp/20090118014905 感謝しながら生き続けて、その年月が今までの年月を越えた時にどうなっているのか、どうしても見ておいて欲しいと、何も出来ない...

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