スタバとかいう、おしゃれなとこじゃなくて、ドトールとか、ベックスとか、そういう系の。若者というよりはサラリーマンを相手に、右から左へテキパキ作業していくチェーン店で。
月曜の朝、通勤途中に、安いコーヒーを買うのは前からの習慣だった。朝食を作っている時間を節約するためだ。月曜の朝は時間がない。
朝、もたもたしている客や店員を見ると、イライラする。コーヒー一杯に何分かかっているんだ、と思う。作るほうも、お金を払うほうも。だから、できるだけ、機械的に注文ができる店を選んでいた。
そんな日々のなか、最近、勤めているオフィスが別の街に移った。
それにともない、通勤経路が変わった。月曜の朝にコーヒーを買う店も、今までとは違う店に変える必要があった。前と同じチェーンの店は、新しい路線にはなかったのだ。でも、似たような店はあったで、適当にそのコーヒーショップに入った。
新しく御用達にした店、そこに、見てくれの良い男の店員がいた。整った顔立ちをしていて、浅黒い肌、焼けたような茶髪の髪。ギャル男というのか、お兄系というのか、定義は知らないが、そんな感じ。
あ、イケメン。と思ったが、特に関心はなかった。私とは種類の違う人種である。淡々と注文を告げた。
すると、意外にもその男は、敬語がきちんとできていて、もの腰やわらかで、コーヒーを作るのが早かった。となりのひょろ長くて髪の薄い中年の店員(たぶん店長)と、まるで中身が入れ変わっているかのようだった。おれがそいつで、そいつがおれで。
見かけとのギャップに、私は小さな感動を覚えた。
そして、月曜の朝にだけのはずが、私は次の日も次の日も、コーヒーを買うようになった。ブレンド以外にも、カフェラテを頼んだり、紅茶を頼んだりした。特に意味はなかったけど、たぶん彼に注文するのが楽しみだったのだろう。
1度、なぜだかイケメンは、私の注文を間違えた。私はもたもたする奴が嫌いだった。単純作業をとちる奴が大嫌いだった。なのに私は、不思議と、やりとりが増えたことを好ましくすら思った。
そんな毎朝が10日ほど続いた頃だった。朝、いつものようにレジに並ぶと、イケメンが「きょうは何にしますか」と尋ねてきた。「きょうは」って言ったよ、「きょうは」。
私はほんのり顔に熱がこもるのがわかった。覚えてもらえたんだ。「こ、これください」ちょっとどもりながら、カフェラテを注文する。にっこり笑う彼と目が合う。私は目が泳いでしまった。
そして勢い込んで、このほのかな恋話を、仲の良い同僚に打ち明けた。同僚は、教えてくれた。「あーあそこはねー、見たことありそうな客に『今日は何にしますか』って聞け、ていうマニュアルがあるんだよ」。
くそ。あの程度の味で、スタバの真似すんな。っていう話。
ちなみにスタバのコーヒーはドトールより高いけど品質劣るらしい。 豆を焙煎してから輸入するからだって。 そうすると関税が安くなるんだそうだ。 ちなみにドトールは輸入してから焙...
あーいいな 恋っていいね 仕組まれた言葉だとしてもいいじゃない だってしょうがないもの としか思わなかった。
どっかで聞いた話だと思ったら、オー・ヘンリーの「魔女のパン」だ http://cosmoshouse.com/works/loaves/loaves.htm