もう何年も前に終わった話。
でも、同じことで苦しんでいる人のために書き残しておく。
ストーカー騒動の時に、しっかり対応してくれた会社には感謝している。
個人や会社を特定するのは無理だろうけど、話の大筋は変わっていない。
部署によっては平日だけのところもあれば、土日祝も営業しているところもあった。
そして相手の部署はフリーアドレスを採用していた。だから、座席を毎日自由に変えられた。
そういったこともあって、付け回されているのに気づくのが少し遅れた。
挨拶をする相手も多くて、その時点ではただの丁寧な派遣さんという印象だった。
ストーカー本人に、休日は何をしているかと聞かれて「旦那とデート」と答えたことがあるから、知らないはずはない。
これも本人の口から聞いたし、他の人も言っていたから確実な情報だ。
ストーキングに気づきはじめたのは、勤めはじめてちょうど1年経った頃。
会社にも慣れて、どの部署が何をしているか、その人がどういう仕事をしているのか。
そういったことが、おおよそ理解できた時期のことだった。
他の人と比べて、挨拶する回数が多過ぎた。
ある日、会って挨拶する回数をカウントしてみたら20回を越えていた。他の人は多くても8回だったから、あきらかにおかしかった。
そして、少しずつ馴れ馴れしくなってきてもいた。
ただ挨拶を交わす相手だったはずが、ある時期から肩を叩いてくるようになった。
軽く叩くだけだったけど、なで方が変というか、どこかねっとりとしていて気持ちが悪かった。
何となくブラ紐の位置を確認されている感じがあって、この時点でようやくヤバイ相手だと認識するようになった。
いちいち体をさわってくるから、こっちとしても会いたくない。
だから、相手がいる場所をできるだけ避けるようにしようと思った。
経理席は、給料情報の他にも個人情報が山ほど置いてあるから、そこだけパーテーションで区切られていた。
そしてストーカーは、いつもパーテーションの出入り口を確認できる場所で仕事をしていた。
これは確実に見張られている。
そう思って、その日はお腹が痛いとウソをついて、タイムシート回収の仕事を同僚に頼み、一日外に出ないようにした。
出るのはお昼の時だけ。
ストーカーは、私が一人でいる時しか寄ってこないから、休み時間は同僚と行動を共にした。
今日はやり過ごせたなと胸をなで下ろし、ちらっと時計を見た時、パーテーションの隙間に黒いものが見えた。
あんなとこに何かあったかな?と見てみたら、それはストーカーの目だった。
私が外に出てこないのに焦れたのか。休みか早退とでも思ったのか。私がいることを確認しにきたらしい。
青いパーテーションの間から見えた目が不気味で、背中に鳥肌が立った。
正直なところ、何で私が狙われているのかわからなかった。
経理には、モデルかアイドルかという評判のかわいい子がいて。社内の男性は、ほとんどその子狙いだった。
その子が狙われるのなら、きっと誰でも納得するだろう。
けど、30過ぎた既婚者の私が狙われる理由が、この時は全然わからなかった。
なるべく一人にならないよう。
経理席の外に出ないよう。
用事で出たとしても、基本は駆け足で移動した。
経理は、たくさんの締め日と締め時間があったから、走っていても違和感がない。
でも、ストーカーの部署はそこまで忙しくないから、もし走っていたら違和感がある。
もし走ってついてきたら、誰かがおかしいと気がついてくれる。
そう信じて、1ヶ月くらい走りながら仕事していた。
自分でも、うまくやり過ごせていたと思う。
視線を受けているのがこんなに疲れるなんて、思ってもみなかった。
外で同僚と一緒に作業していても、触れるか触れないかという距離を歩いていく。
ストーカーの足音は独特で、また来たというのがわかってしまう。
一人でいるところを見つかれば、ものすごい勢いで歩いてくる。
慌てて知り合いに声をかけ、どうにか立ち話に持ち込むと、ゆっくりゆっくり時間をかけて隣を歩いていく。
怖くて、気持ち悪くて。
会社に行くのが嫌になって辞めようかと思い、ついに上司に相談した。
はっきり言って相談するのは嫌だった。
30も過ぎたというのに、人間関係のいざこざを処理できないことが恥ずかしかったし、情けなかった。
すごくいい上司だったから、呆れられてしまうんじゃないかと思うと、なかなか言い出せなかったのもある。
「もっと早く言いなさい」と私を叱って、すぐに部署会議をはじめた。
まず仕事の割り振りを変えてくれた。次の日から、私は経理席から出なくていいようになった。
いつも誰かが私といるように配慮してくれて、シフトまで変更してくれた。
そして「こういうのは、大ごとにするべき」という方針を立てて、上に掛け合うために経理全体で証拠を集めることになった。
私は「なんとなく見られている」というのは、とても証拠にならないと思っていたけど、上司の考えは違った。
就業中は、経理全員がテキストファイルを起動し、その人の動向を記録していく。そうすれば、必ず異常性が浮き上がってくると言っていた。
○○:×× 経理席の前を通り過ぎていった。
○○:×× 経理席の前で印刷したファイルを確認していた。ちらちらと増田さんの席を見ている。
こんな感じの記録を10人がかりで残していった。
最初、1週間続けるという指示だったけど、2日目で方針が変わった。
なんとストーカーは、多い時は2分に一回のペースで私の姿を確認しにきていた。
こりゃまずいぞと、上司が私を引き連れて、ストーカーの上司とかけ合ってくれた。
10人で残したメモを見た相手の上司は、「これは……」と言ったまましばらく黙って、どこかに電話した。
この人達に事情を話して、PC経由でもっと証拠を取れないかと聞いてくれた。
どうやら派遣会社に掛け合うために、動かない証拠が欲しいようだった。
すると、システム管理の係長が、試したいソフトがあると言ってきた。
そして、離席する時はノートPCをスリープにするという規則があった。
ストーカーのノートPCに、フリーアドレスを利用して、サボっている人がいないかと確認するためのソフトを入れたい。
いろいろと難しい説明だったから私には理解できなかったけど、それを入れたら、ストーカーの離席の頻度がわかるという話だった。
表向きはアンチウイルスソフトのテストで、各部署の数人だけランダムに選んだということにして、ストーカーのノートPCにインストールした。
そこから2週間の間。
ストーカーがよく覗きにくるパーテーションの隙間は、上司がどこからか持ってきた広報用のポスターで全部潰した。
ストーカーの上司のはからいもあってお昼時間もずれたし、シフトの情報共有もあったから、お互いの出勤日が被らないようになった。
結果は黒。というか真っ黒。
私の休みの日のログだと、1時間のうちに5分も離席していなかった。
ところが私が出勤していると、1時間のうち40分も離席していた。
ストーカーの上司は即座に派遣会社の担当を呼んで、ストーカーの勤務実態を伝え、月末で切ると通告した。
私に害があってはまずいからと、基本は離席時間の多さからのサボりということで呼び出し、もう今月で辞めてくれと言ったらしい。
そうしたらストーカーは「ただの休憩です。最近、友人関係で悩んでいて……。今後は改善するから辞めたくないです」とすがりついてきた。
派遣の担当も「必ず改善させる。せめて契約期間まではお願いします」と言ってきた。
それで仕方なく、あくまでストーカーの上司が気づいたという体で「いつも経理席の近くをうろついているのはなぜだ?」と聞くことにした。
最初は、一向に口を割らなかったけど、じわじわと証拠を出して追い詰めていったら、やっと「増田さんと仲良くなりたかった……」と言い出したらしい。
私は、他の人にもするように単に返しただけだったけど、ストーカーにとっては「俺に気があるように笑っていた」ように見えたんだとか。
ストーカーの上司が、「お前、嫁さんいるだろう?」と聞くと「会社のことは嫁には関係ない」と。
そして「増田さんならわかってくれる。彼女と話したいから呼んで欲しい。彼女の誤解がとけて仲良くなれば、もう仕事中に離席はしないから、このまま働かせて欲しい」と意味わかんないことを言ったらしい。
それでストーカーの上司が激怒して「会社は仕事する場所であって、不倫をする場所じゃない!」って、その日に派遣切りして終わった。
派遣の担当者はもう頭を下げまくって、ストーカーの荷物を一緒にまとめて引き取って行ったとか。
いちおう誓約書のようなものも書いてもらったとは聞いたけど、私には見せてはもらえなかった。
ストーカーは社内の付け回しだけで、勤務後は追いかけてきてなかったからこっちの住所バレはしていない。
しばらくは派遣会社内で働かせて監視する。もし、逃げたらこっちにも連絡すると言われて以降、まったく連絡はなく。1年経ってから念のために確認したら、まだそこで働いているということだった。
これについては感謝してもしきれない。心からありがたいと思っている。
もし、いまも社内ストーカーに苦しんでいる人がいれば、メモでいいから証拠を残すことと、一人でも多くの味方を作ることを勧めたい。
会社って逃げ場がないから、悩んでいる間に追い詰められていく。
気がついたら、声を上げることが難しくなっていたりするから、早めに動いた方がいいと思う。
「勘違いかもしれないから、一緒に確認して欲しい」って言えば、協力してくれる人が出て来る。次から、悩む前にそう言って味方を作れと上司に言われた。
同僚がFacebookをやっている人で、ストーカーが派遣切りされた日に、なんとなく検索したらアカウントを発見し、記事を読んだらしい。
そうしたら、その日の夜に嫁さんと仲良く食事している写真がアップされていた。
私のことをストーカーしている期間も、ずっと嫁と仲良くしている写真がアップされていて、友達からのコメントは「相変わらず仲がいいね!」で埋まっていたんだとか。
異常なまでに追いかけてきていた人が、家に帰ると嫁と仲良くしているのが理解できなくて、この話が一番ゾッとした。
まさに異常行動だったんだなと、そんな風に思っている。
追記を書きました。
世の中は 広い 自分の 想像を 絶する 恐ろしく 怖い 組織や 個人が 確かに 存在している しかし そういった 組織や 個人とは 無縁で 生きていく という ...
会社にストーカーがいた https://anond.hatelabo.jp/20170806105922 この記事の続き。 私の言葉が足りなくて、伝わっていない部分があったので追記しておきます。 上司の対応について この人は、...
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