はてなキーワード: 夢現とは
※12.25追記:すいません、ネタばれなのでやってないけどこれからやるつもりの人は読まないでください。書くの忘れてた……そういえば正式発表されたんですかね?これでデマだったら涙目。
最初この情報を知った時の感想は「へー、そうなんだ」でした。んで葉鍵板やら各種ブログやらを見て回って、あまりのウブな反応っぷりに吹きました。「リトバスにエロはいらないだろう……」「友情の物語が崩れる」「ショックです」などなど。う、ウブすぎる……。その割に「エロエロなアフターもの、FDなら良かったのに」という意見は多い。なんという解離。というか、未だに智代アフターがトラウマなのでしょうか。兎にも角にも、実にウブな「リトバス大好き!俺のリトバスを汚さないで><」というご意見の数々に大変、心温まる今日この頃です。
感情的な「エロはやめて」的言説は置いておくとして、エロを入れると「リトバスの構造的に不味い」という説は考察してみたいところです。これはつまり「リトバスは虚構世界をループする中で理樹(と鈴)が成長していくお話だから、構造上、全ルートを理樹(と鈴)は体験しているという前提が成り立つ」ため、単なるマルチエンディングと違い、トゥルーエンドの理樹きゅんは「みんなと致した」末の理樹きゅんになってしまうということです。しかも、回避策として浮かぶ「バッドエンドえろえろ作戦(別名:ナギー夢現エンド方式)」ですら解決できないのが厳しいところ。だって理樹きゅんの繰り返しの中にはバッドエンドも含まれているわけだからね(いくつかのバッドエンドにおいて、次の世界を示唆する言葉は散見されます)。小毬発狂エンドや美鳥バッドエンドでのえろえろは容易に思いつくだけに惜しい。実に惜しい。しかし本当にそうだろうか。本当に「不味い」のか? 実は、全然不味くないんじゃないか? なぜキスはよくてエロはだめなのか。ラストでヒロインたちはキスの話をしているじゃないですか。そもそも「みんなと致した」末のトゥルーが不味いなら、各ルートそれぞれ、恋愛関係になっている時点で不味いし、その時点で「不潔です><」とか批判しないといけないわけです。事実、そういう批判もあるはずです。でも、その構造は受け入れておきながら、いざエロが絡むとなったとたん「不潔です><」は無いでしょう。
個別ルートで純愛を語りながら、それらを渡り歩く美少女ゲームに必須のスキルを、とある偉い人は「解離」と呼びました。リトバスも最初からエロありだったら、この解離スキルを使いこなした歴戦のユーザーはエロ部分を含めて「面白かった」と言うでしょう。「Keyにエロはいらない」というお決まりの言葉は当然出るでしょうが、それはもうお約束みたいなものです。ところが、一度「エロなし」の物語を見てしまった僕らは、いざ「エロあり」になった瞬間、解離がうまく機能させられなくなってしまっています。何を今さら的なウブな反応は、ひょっとするとこの部分にあるのかも知れません。ToHeart2の場合と違って、明確に「共に様々な困難を乗り越えてラストに至った理樹きゅん」との記憶を持つだけに、この解離は困難を極めるというのが正直なところなのでしょう。
だが待ってほしい。逆に考えるんだ。だからこそリトバスのエロはかつてないほどに興味深く、Key史上でも類を見ない独特な魅力を放つ可能性を秘めています。そもそもエロとは禁忌であればあるほど魅力を増すもの。Keyのエロは予てより「予定調和的」で「不必要なもの」としての位置を占めてしまっていたがために「必要のないもの」として処理されてきました。当然です。エロゲーというフォーマットだからエロがあって当たり前。ここから「ずらす」ために麻枝准はAIRを作ったわけです。ナギーの「バッドエンドでのみエロ」はエロゲーのかつての機能からすれば奇形だったわけですし、観鈴ルート→AIRルートに至って完全にエロゲーとしての梯子の数々を外しまくったのも、Keyがエロゲー屋さんであるという前提があったからこそ機能しました。翻って、CLANNADで完全にエロなしとなったKeyは、リトバスもエロなしになって「もうKeyはそっちなんだね」という印象を刷り込むことに成功しました。そこでエロ。そりゃあみんなびっくりするよ。リトバスは元々エロでもいけるように作っているのですが、ユーザーとしては「エロなしで当たり前」なのがリトバスです。「エロなしで当たり前」のはずの物語でポルノグラフィーが展開するという禁忌。遣り様によっては、Keyの新しい世界が見えるかも知れません。そもそもリトバスは実験色の強い作品であり、今後の「ポスト麻枝時代」を築くための礎という位置付けがなされているのは容易に想像がつくというもの。どんどんやってほしい。なんでも試してほしい。それを受け入れるだけの余剰が、あのリトバスという途方もないゲームには含まれていると私は信じています。