■ガラスの靴を渡せないまま君は…
八月に約束したことを覚えていますか
あの暑い暑い日のことを
君は靴を片方だけ脱いで
「いつかこの靴を返しにきて」と
笑ってみせたこと
秋も冬も過ぎました
またいくつかの夏が来ました
私はずっとそれでも
あの時のまま靴を
靴を預かっていました
時がたち
君は変わってしまいました
久しぶりに会った君はふっくらして
少しだけしわが増えたみたいでした
だから私は靴なんて
ガラスの靴なんてもう必要ないなと
思ってそれでも捨てるのは辛いので
どこか世界の片隅へ
そっと置いておくことにしました
八月の約束を覚えていますか?
どこまでもどこまでも
反射していた
あの靴のガラスの光を
いつか迎えにいこうとしたこと
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