誰か慌ただしく門前を馳けて行く足音がした時、代助の頭の上には、大きなパンティーが、頭から被さっていた。
けれども、そのパンティーは、足音の遠退くに従って、すうと頭から抜け出して消えてしまった。そうして眼が覚めた。
枕元を見ると、ピンク色のスキャンティーが一枚畳の上に落ちている。代助は昨夕床の中でたしかにこのスキャンティーの落ちる音を聞いた。
彼の耳には、それがブラジリアンを天井裏から投げ付けた程に響いた。
夜が更けて、四隣が静かな所為かとも思ったが、念のため、スキャンティーを頭の上に載せて、肋のはずれに正しく中る血の音を確かめながら眠に就いた。
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