2016-12-22

――雨だ

飛沫が地面を、世界を叩く

遥かな天空から、直線の軌跡を描いて雨粒が落下してくる

大地はぱちぱちと音を立て、建物もその身を鳴らす

中空は薄ぼんやりとした見通しで、透明な灰色で街を色付けていく

漂う匂いは、いつかの“あの日”を記憶から引きずり出し、目の前の視界を過去に同期させる

冬の雨

匂い立つような舞台装置の中で

二度とは来ないこの瞬間、世界で一番美しいこの数瞬を溺れていく

「ああ、しばらく家には帰りたくないなあ」と

  • 雨のしぶきと言ったら!まったくひどいもんだったよ! 地面も世界もひっぱたいてそれで終わりだってんだからな! どっからやってきたかだって? おてんとうさまから真っ直ぐ転がり...

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