■あの人
あの人のことが大好きだった。
あれから5年、あの人以上に好きになれる人には、まだ出会えない。
告白はしなかった。
少しずつずれたタイミングが、どうしようもない深い溝になっているように思えて、結局足がすくんだ。
あのとき勇気を出していたら、何か変わった?
そんな考えから今も抜け出せない。
なまじあの人の注意が一瞬自分に向いたから余計に、拘って、捉われているのかもしれない。
今でもたまに、あの人と出会った瞬間を反芻する。
地縛霊みたいに、いつまで経っても心は5年前のあの場所にある。
もう、あの人が手に入らないなら、何もいらない。
このままずっと一人でいることになっても構わない。
こんなことは、ばかばかしくて、誰にも言えない。
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