2010-12-13

眼にて云う

だめでしょう

とまりませんな

がぶがぶ湧いているですから

ゆべからねむらず血もでつづけるもんですから

そこらは青くしんしんとして

どうも間もなく死にそうです

けれどもなんといい風でしょう

もう晴明が近いので

あんなに青空からもりあがって湧くように

きれいな風が来るです

もみじの若芽と毛のような花に

秋草のような波を立て

焼け跡のある藺草のむしろも青いで

あなた医学会のお帰りか何かは判りませんが

黒いフロックコートを召して、こんなに本気にいろいろ手あてもしていただけば

これで死んでもまずは文句もありません

血が出ているにかかわらず

こんなにのんきで苦しくないのは

魂魄なかばからだをはなれたのですかな

ただどうも血のために、それを云えないがひどいで

あなたの方から見たら

ずいぶんさんたんたるけしきでしょうが

わたくしから見えるのは

やっぱりきれいな青空と、すきとおった風ばかりです

  • 眼にて云う

 

なんだかんだ、と

時間ばかりは、どうしたって、過ぎていきます

僕の心は、どこかに、留まったままのようだ

一体何処で、油をうっているのか

わかりようもありませんが

不思議とあせりもしないものです

つまり、まだ、Nikonあいておりません

いま、部屋の悲鳴から、察するに

外は大雨のようだ

降り出す前に、僕は帰路につけました、これはきっといいことだろうと思う余裕はまだ、ある

家へ帰ると、インターネットで買っておいた、カメラバッグが届いている

次の現場はまだ決まらない

心の平和も、宣言するには、心許ない

何が足りなくて、何が満たされているのか、わからない

しかし、そのどれもが、なんとも小さいこである

こんなことばかり、恥も知らず

語っているから、誰だって思うだろう

暗かろう、哀しかろう、寂しかろう

しかし存外、そうでもない

この渇きと、飢えが、跡形もなく消え去ったとき、僕はきっと死ぬのだろう

どうも、満ち足りないから、前へ、上へと歩んでいける節がある

からといって、この渇きと飢えを、楽観視もしていられない

何年も昔、秋の夜だったか

日付がかわって、間もなく

唐突に、一通のメールが、きた

そこには死にたい一言書いてあった

彼女がそう言う理由は知っていた

長年付き合った彼に、別れを告げられた

彼女が、少しずつ、しかし確かに、形作っていた、結婚という夢も崩れた

日常から生まれる

あらゆる苦しみから、寂しさから

逃れる希望を、彼女は、そこにみていたのだった

いつでも

天真爛漫に、誰よりも幸せそうに笑いながら

苦しんでいた、彼女

それをみせないのは、強さからはなく、孤独を知っていたか

そして僕が、そのメールを、冗談に受け取れず

彼女の家へ向かったのは

それを薄々、感じていたか

彼女に限って

まさかことに及ぶようなことはないと分かっていたが

教えてあげたかった

絶望を前にした

どんな論理も、言葉も、無力になる

そんな時は、もっと直接的に、感じられるものじゃなきゃ、心は救われない

それは時と場合によって

傍にいることであったり、行動であったり、継続であったり

色んな形をとりはするが、どれも

やさしさや、隣人への愛とよばれるものだと、僕は思っている

それが為になるのか、何かの役にたてているのかはわからないが、しばらく彼女の傍にいることにした

僕よりも多くの経験を重ねてきた人であることに間違いはなかったが

それでも少しは役に立てたと、今でも思う

あの時、彼女がみている、生きている小さな世界

彼女が、僕たちが、生きられる、大きな世界の何分の一でしかなかった

その人の小さな世界で、ほぼを占めていた

何かが、なくなってしまったのならば

当然、心に穴はあくだろう

もし誰かに甘えることで、仮に、少しでも

大きな世界に、希望を持てるのなら、証明したかった

それも可能ならば、友情でもって

何故なら、残酷なことに

人が、死にたいと思うくらい絶望に面しても

大きな世界は、それを受け入れてくれているような気がしたから

いくらでも、生きられる場所を、用意してくれているように思った

しか彼女に、そんな残酷希望を言うには、躊躇われる

から地道な方法で、示すしかなかった

一人ではないこと

楽しいことは、まだ残されていること

少しの間でも、忘れられること

それがだんだん、長くなっていくこと

言葉いがいの何かで、教えてあげたかった

例え、生きていることに意味を見出せなくても

死を選ぶのは、いや、自分を傷つけるという行為が、答えになるわけではな

失ってからはじめて気付くものは、たくさんあるし、それが自分じゃ洒落にもならない

から、うしろむきな僕が、いつまでたっても見つけられない

生きる希望は、それはそれで、よいのかもしれない

しかしそう楽観視するには、人生には、苦しみが溢れすぎている

から、この世界がきっと用意してくれているであろう、居場所を探す力だけは残しておかなくてはならない

渇いている心が、飢えた頭が、ある限りは、より善いものを求めて、歩いていく、力になるだろう

道中は、弱音ばかりで、幸福音色を聴かせることなどできないかもしれない

しかし、満ち足りていないのなら、前へ進める

小さなことで、満ち足りぬ自身をいずれ、誇れる日がくるかもしれぬ

それが、希望を追う、力になるだろう

そしてまた、目の前の絶望にも、溺れぬよう、抗う力になるだろう

そうすれば、溺れかけているように思える、この頭の中からみても、

 

やっぱりきれいな青空と、すきとおった風ばかりです

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん