最近Web業界で制作会社が敏感になっているなぁと思うのは、外注先に対して、制作した事例をブログなりTwitterなりWebで公開してくれるな、という、いわゆる守秘義務です。そういった類いのコンプライアンスの同意を求めてわざわざ新規に署名を求めさせることも珍しくありません。
はっきり言いますが、Web業界に存在している制作会社は全体で見ると、この10年でかなり無能に成り果てています。企業の体力が落ちてきている、といっても良いです。有能な人は制作会社を離れ、新たに会社を起ち上げるか、フリーランスになるか、企業のWeb担当などに転職しているケースが顕著になっています。求められるスキルや感覚も変わってくる中で、残っているのは自身で制作したことがほとんどないようなディレクターばかり、というケースも珍しくありません。一時のネットバブルのようなものの反動ですね。
フリーランスや下請け企業という立場は非常に弱いものですが、Webという土俵で仕事をしている立場上、Webで自分たちの仕事を公開できない、という制約はその個人や企業の可能性や成長を阻害するものだということは当然なんですが、そもそもそれは発注している制作会社自体が「自分たちは過去の実績で仕事を取れるけれど実は無能なので中抜きを食らったら終わる」という不安そのものだったりします。
以前、海外(というかアメリカ)の企業と仕事をして納品した時に、「これは誰が作ったんですか?」っていう個人の技術者に対してアプローチを求める質問に、会社のディレクターは「スタッフみんなで作りました」って言ってたけど、実は実際に「作った」と言える人はほぼ1人だったりしていた記憶があります。
「会社のみんなで作りました」って言うものが実は外注先の、それもかなり個人の力に依って作られた、というのはおそらくこの業界に限らずかなりよくあることで、そういった現実をできるだけ隠そうとするのが日本企業の実態であり、それが有能な人材の流出に繋がってしまっているのかなぁという気がします。こういうことをしている間はダメなんだろうと思うんですが。