あの子を好きになってしまってからもう12年が経った。
きれいに言えば純情なのかもしれないが、自分でも粘着だなと思う。
「○○のこと好きでしょ?好きなタイプだと思うんだけど」
と言われたことだった。
言われた時点では全く意識していなかった。
それから少しずつその子を見るようになって、その子の事をだんだんと好きになっていった。
電話から大体半年経ったくらいくらいの頃に、その子に彼氏がいることとそれが部長だということを知った。
家庭環境の影響もあってか単に大人ぶりたい年頃だったのか、
と思っていた(思おうとしていた)時期もあった。
部長は真面目で学業の成績もよく決してブサイクではなかったし、若干頭が固いくらいしか欠点は無かったように見えたので勝てないと思っていた。
初めて携帯を買ったときその子は携帯を持っていなかったけど、携帯を買ったと知った日にはメアドと番号をなんとか聞いた。
友達としては仲が良かった(と思う)ので、多少の遠慮はしつつもメールをした。
ちょっとしたやりとりで凄く気持ちが盛り上がっていった。
自分の人生を振り返って、あまりにも不幸な事柄に溢れている人生に希望を持てなくなって自殺しようかと考えたりもした。
でも、その子に告白するまでは生きようと思った。
高三の秋頃、彼氏とわかれたことを知った。
それを知ってしまった俺は、好きすぎて切なすぎて大学受験のための受験勉強に身が入らない状態になってしまった俺は意を決して告白をした、メールで。
もうこの時に、俺は全てに負けていたんだと思う。
振られた。
センター試験直後にたった一人の親が脳梗塞で入院したこともあって、まともな精神状態ではなかった俺はセンター試験に失敗した。
放課後の愚痴こぼしタイムで、その子も含めて男女あわせて7人くらいで一緒にしゃべっていたのだが、恋愛談義になった。
その子が「この中で付き合うとしたら○○(=俺)だな」と言った。
二次試験も失敗した。
志望分野が違うのでクラスは違ったけど、自習室の席取をしてあげたり、図書館で一緒に勉強したりした。
友達に送るはずが間違えて「○○(=その子)が目の前にいて見とれちゃって勉強できない」と本人にメールしてしまったりした。
学部の偏差値としては現役の時よりもやや下になるけど、やりたいこともなかったしその子と同じ時間を過ごしたかった。
秋頃、また告白した。
やっぱりどうしても女の子として好きなんだ、と。
振られた。
「良い人だと分かっているけど友達以上には今は見れない」
と言われ、彼氏がいることを聞かされた。
旧帝の男だった。
模試の合格率はその子が常にAとかBばかりだったのに対して俺はほとんどDとかだったのだけれど、センター試験は俺が成功してその子は失敗してしまった。
それでも諦めずに志望大学・学部を変える気はないということで俺はどうにか二次試験突破できるように学業成就祈願で有名だった神社のお守りを半日かけて買いに行ったてプレゼントした。
センター試験だけでほぼ合格が決まっているような状況だったので余裕があったのもあったけど、好きな女の子が頑張っているのを少しでも何か力になりたかった。
本命の二次試験当日朝、電車の駅で待ち合わせして一緒に受けに行った。
試験後の会話では俺の回答の間違いを指摘されたりしていたのでその子の出来はそんなにまずくはなかったと思っていた。
泣いた。
しばらくはしつこくメールをしていたと思う。
大学生になった記念の飲み会帰りに途中下車してその子を駅から送っていこうとしたりした。
その子の友達に無理を承知で頼んで写真をもらったりもした。
今までその子は優しいから迷惑そうな顔をしなかっただけなのではと思うようになった。
少しメールが減った。
それ以降、数カ月に一、二回のメールと年賀状だけのやりとりの距離になった。
数年後の去年、部活以降も趣味として続けていたもののイベントにその子を呼んでみたら来てくれた。
相変わらず馬鹿みたいに可愛く見えて、天使のように見えて、やっぱり自分は好きなんだということを改めて自覚してしまった。
「相変わらず可愛いね」
「そんなこというの君だけだよ」
というやりとりが精一杯だったけど。
今でもやっぱり時々会いたくなるし、抱きしめたくなるし、近くにいたいと思う。
でも、就職で他県へ俺は出てしまったのに対して、その子は地元で働いている。
一緒の時間を過ごせないからその子に俺を好きになってもらう機会もない。
会う機会もないから会話のネタも無いのでメールも年一回するかしないかという程度。
mixiもその子はログインしなくなったから今どうしているかもわからない。
その子の声、顔、仕草、他人への優しさ、金銭感覚、思いやり、ファッション、常識感覚、その他もろもろ、人生で出会った女の子で最も好きだと断言できる。
その子と結婚できるなら他に何もいらないと思える。
その子のためなら死ねるとさえ言える。
でも、忘れたい。
吹っ切りたい。
前に進みたい。
どうしようもなく好きなのは現実。
付き合うどころか会うことすら非常に難しいのも現実。
その子に会いたいということ以外、人生でやりたいことがないと思えるのも現実。
その子がこの世から消えてしまったら、俺も消えてしまうと思うのも現実。
でも、忘れたい。
切なすぎるから。