確かに怠惰を奨励するような言説が世に跋扈していて、それに惑わされる若者がいることは認めよう。そういう人たちを批判すること自体は構わないと思う。しかし森毅をそこで非難するのは誤爆と言わざるを得ない。
そんなときに、森が著書の中で
「ええかげんでいいんや。大学では勉強なんてしなくていい。エリートは勝手に育つもんだ」
と主張していたのに、救われた気がした。
いったい森毅がどこでそんなことを言っていたのだろうか。
「こうあるべきだ、という型に囚われる必要はないし、『エリートたるものかくあるべき』という型に学生をはめるのも馬鹿らしい」
「人に言われたことやイデオロギーを何でもかんでも真に受けて生きるのは痛々しいし危ない」
というそれだけのことに尽きる。ただ、これらの命題は自家撞着と紙一重(「俺の言うことを聞くな」というのはパラドックスである)だから、あんな持って回ったような言い方になっている、それだけのことだ。
私はそれを当時理解できずに痛い学生生活を送ったからこそ、その言葉の正しさを今になって身に沁みて実感していると確信している。
私が大学生になるかならないかの頃には、「怠惰の奨励」とはちょうど逆の言説が流れていた。「分数ができない大学生」だの「東大生はバカになったか」だのその手の本だ。その手の本を読めば、
「日本の大学生は勉強しない、教養がない、東大生でも厳密な学問を理解できない、旧帝大生といえども外国の大学生に比べて圧倒的に劣っている」
というようなことばかりが書かれていた。
それを真に受けた私は、「教養」とやらを身につけ、「あるべき大学生の姿」に自分を近づけるために随分つまらないことをやってしまった。興味も何もないのに哲学書だの文学書だのを紐解いてみたり、あるいは勉強の過程において、興味の範囲をはるかに超えて厳密さのために厳密さを追究してみたり。全く無駄であったとは言わないが、著しく非効率だったことは間違いない。そんな衒学的な「教養」だの、必要最低限を越えた完璧主義的な「厳密さ」だの(ε-δ論法というレベルではなく、物理数学を勉強するためにまず数理論理学を勉強するような類、あるいは読み始めた本は最後まで一行たりとも漏らさず理解しなければ許さないとする類の)を、自分の興味から逸脱してまで追い求めても、苦痛なだけで身に付くことは乏しかった。今だから分かるが、私はもっと自分を信用して、自分の興味に忠実になるべきだったのだと思う。そうすれば、「教養」だの「厳密さ」だのは、必要になった時点でいくらでも身につけることができただろうからだ。「青春」をエンジョイすることを放棄して人よりも多くの勉強時間を使っていたのに、人より飛び抜けて優秀でもない自分に嫌気がさしつつ、どうしてよいか全然わからなかった。修士論文のための研究をやっていて最後の数ヶ月でようやく自分の過ちに気づいたとき、余りに自分が時間を無駄にしていたことに気づいて絶望的な気分になったものだった。
敢えて長く自分語りを続けてみたが、あなたと対極的な私の失敗談を読んであなたはどう思っただろうか。「お前の下らん失敗など知るか、そんなどうでもいい本を真に受けたお前が悪いんだろうが」。その通りである。私が馬鹿だったのである。人に馬鹿と言われたくないがために、「教養がない大学生」「学力低下の大学生」と言われたくないがために、自分を無意味にガチガチに縛ったために自分の学生生活を楽しくなくしてしまった私の単なる自爆である。しかし私の失敗とあなたの失敗の一体なにが違うのか。どこかで見聞きしたことから勝手に自分で組み上げてしまった自己規範に従った結果、自分の人生をスポイルしたという点で、あなたと私のやったことは全く同じだ。そして森毅が言っていたことの真意を全く読み取れていなかったのも全く同じだ。
「他山の石」という言葉をご存じと思う。私の自分語りが痛いと思われるならば、あなたの自分語りも同じぐらい痛いことを思い知るべきだ。そして人を恨むのではなく、逆に過度に自分を責めるのでもなく、ただ自分が失敗したという事実を受け入れるべきだ。運が悪かったのか、環境が悪かったのか、そういったことが原因であなたや私は正しい道が見えなかったのかもしれない。だが、そのことに不満を言っても誰も助けてくれないし、失われた時間は返ってこないのだ。ならばせめて、今後の時間を無駄にしないようにお互い努力しようではないか。
http://anond.hatelabo.jp/20100307133147 匿名なのだから記事が残っていようが本人には何の痛痒もないはずだ。 匿名なのに記事を消すなど不合理だと思う。 よって再掲させてもらう。 --------- 昨年...
私も森毅の本が好きだった立場だが、一言いわせてもらう。 確かに怠惰を奨励するような言説が世に跋扈していて、それに惑わされる若者がいることは認めよう。そういう人たちを批判...
森毅がやけどを負ったというニュース、本当に「昨年の今頃」でびっくりした(2009年2月27日の出来事らしい)。あの恨み節を書いた元増田の森毅ファンっぷりは異常すぎる
http://anond.hatelabo.jp/20100308183630 森毅はほとんど読んでいないが、 その森が、火傷を負ったときいて、胸がすぅっとした。 日本では、知識人の無責任な放言が許される雰囲気がある。 ...
あんたも気楽な人間だな。
http://www.47news.jp/CN/201007/CN2010072501000278.html 京都大は25日、数学者で評論家、京都大名誉教授の森毅氏が敗血症性ショックのため大阪府寝屋川市内の病院で24日に死去したと発表した...
http://anond.hatelabo.jp/20100308183630 私は2,3冊しか森さんの著書を読んだことがありません。 ともあれ、森毅さんのご冥福をお祈りします。 以下、つっこみ。 この再掲された増田は、い...
こう言うのはただ読めばいいんだよ。何突っかかってんだ?
なんか森毅の訃報の後で変なコメントがつけられて、また本人によって削除されているんだけど↓ http://anond.hatelabo.jp/20100727065732 あんたも気楽な人間だな。 http://anond.hatelabo.jp/20100727065...
こいつは、一回書き込んで、また消すのが趣味なんだ。 一部で流行中らしいぜ?
なにがインフレしているの?w
11年前のここ、かなりやべえ民度だったんだな 新参者だからわからんかったわ 自分のコメントを数年後に見直すことで学びもありそうだな ID制ってのがいいねここは ある意味で福祉のよ...