「ウェブカレ」は、エントリーを上げるとあっという間に高ブックマークを
ゲットしてしまう、はてなでは有名なはまちや氏プロデュースということで
興味をそそられ、会員登録した。
「ウェブカレ」の舞台は高校である。「ウェブカレ」をやっていると
自分の高校時代を思い出す。
私(♀)は新設2年目の高校に通っていた。入学した時は3年生はおらず、
体育館もプールも無く、高校と周囲の畑を隔てるフェンスも無かった。
希望と自由の風が吹いていた。
中学までは伝統とプライドでぎゅうぎゅうに締め付けられた学校に通っていた。
学業成績の悪くなかった私は進学校を受験してもおかしくなかったのだが、
それが出来なかったのは内申点が著しく低かったから。学校が強要してくる
不条理な伝統に、徹底的に反発した。
だから尚さら、私は自由な高校生活を謳歌していた。
そんな中、四年制大進学を希望し、成績もトップクラスだった私は、
自然、教師の期待を背負うことになった。
年3回ある実力テストの結果、学年上位50名の名前は毎回、昇降口の掲示板に
貼り出された。素敵ボーイズの一人、綾川竜士よりも私の名前はいつも上位にあった。
2年生の夏、私が掲示板を見ていると、人だかりの最後尾に立っていた人たちが
「あ!8組の(私の名前)さん、また入ってる!」
彼女たちは私の顔は知らないのだ。
私は恥ずかしくなって、その場を逃げるように立ち去った。
またある時は、クラスメートときゃあきゃあ騒ぎながら階段を昇っていたら、
背後から「あなたが(私の名前)さんですか!」
振り返ると4組の担任教師。私たちの学校は校則で、上履きのかかとに
名前を書くことになっていた。
私はいつしか特別扱い(補習、個人指導等)されることを当たり前のように
受け入れていた。だからあの日、10組の担任教師でもある生物の先生に
研究室に呼び出された時も、特段驚きもしなかった。
先生は受験向けの問題集を紹介してくれた。私はそれをメモった。
先生が、やはり四年制大に進学するつもりなのかと聞いた。
私はたぶん、はいと答えたと思う。
「俺のところへ、嫁に来るっていうのはどう?」
唐突な先生の冗談を、私は「それは無い!」と笑い飛ばした。先生も笑った。
10組の全員が祝福し、教室は手作りの花でデコレートされた。私は
「私にあんなこと言っておいて、先生、結婚するんじゃん」と思った。
「ウェブカレ」素敵ボーイズの一人、綾川司はただ一人、教師という設定。
かっこ良くて優しくて、女生徒に人気。
いつも温かく生徒を包む大人だが、時にドキっとするほど男性を意識する
発言をする。そんな危険な発言をしておいて
「驚かしてしまいましたか、すみません」と微笑んではぐらかす。
弟の竜士はそんな司を
誰にでも優しくするくせに本命には本心を言えない「デレツン」だと言う。
素敵ボーイズのオリジナル・ノベルが掲載されている。ノベルの中で
司は生徒に恋心を抱いてしまった苦悩を吐露している。
本気で私を好いてくれていたのではないかと…。
見合いの話が進み、自分の気持ちに踏ん切りをつけるために、
あの日私を呼び出して、不自然なプロポーズをしたのではないかと。
考えることすらできない子供だった。
司のノベル、最後の二行を読んだ時、それまでこらえていた涙が
抑え切れずに頬を伝った。