2009-09-04

「リボソームが粉々」の件

自分も気になった(意味がよくわからなかった)ので、ざっくりと論文を読んでみたまとめ。

はてなブックマーク - ミツバチ大失踪はウイルス 米大学が原因究明 (1/2ページ) - MSN産経ニュース

http://b.hatena.ne.jp/entry/sankei.jp.msn.com/economy/business/090903/biz0909031508015-n1.htm

ミツバチ大失踪はウイルス 米大学が原因究明 (1/2ページ) - MSN産経ニュース

http://sankei.jp.msn.com/economy/business/090903/biz0909031508015-n1.htm

実験内容はマイクロアレイのみ。

アメリカ東部、西部、それぞれの地域からCCDが顕著になった2007年以降のミツバチサンプリングCCDの状況がsevereなコロニーとmildなコロニーに分類して比較。対照区として2006年当時の健康ミツバチのサンプルを使用。マイクロアレイCCDコロニー健康コロニー間の遺伝子発現の変化を比較しようというオーソドックスアプローチ

マイクロアレイプロトコールは以下の通り。

List of Protocol objects

ArrayExpress Home

http://www.ebi.ac.uk/microarray-as/ae/

(E-MEXP-2292でsearch)

リボソームが粉々という話がなぜ出てきたのか。

Oligo dTプライマーにしているので、原理的には(正常な)rRNAシークエンスは検出されないはず。なのに、なぜか検出された(severeとmildのグループ間でも正の相関あり)。

可能性として、次のようなことが考えられた。

  1. rRNA分解過程でrRNAにPolyA付加されるケースが報告されている。
  2. mRNA中にrRNA配列が存在している(これを介してリボソームへの取り込みを制御している)

1と仮定すると、rRNAが検出されたのは、rRNAの分解(断片化)が促進されているからではなかろうか。

2の方、該当するようなmRNAミツバチ遺伝子では確認されていない。一方、ウィルスはこのような仕組みを利用している可能性が高い(cap構造を持たない、IRES型翻訳システムを利用するので、リボソームタンパク質親和性を高める仕組みがあるかもしれない)。

後、当然、検出されるウィルス病原菌(由来の遺伝子)量も増加している。

論文ではこれ以上のことは不明。筆者らの主張も、

8/25/2009: Drs. Reed Johnson, May Berenbaum, and Gene Robinson identify a new marker for colony collapse disorder and a potential cause- (PNAS, Time).

Department of Entomology - University of Illinois http://www.life.illinois.edu/entomology/

ということで、現時点ではCCD検出用マーカーとしての利用可能性というところまでかなという印象。

とりあえず、リボソーム崩壊の電顕写真でも撮るなり、もっと単純にサンプルRNAでノーザンブロットでもかけてみるなり、rRNA断片化を示すルーチンな実験が利用できそうなので、これが本当に原因になっているのであれば、わりとすぐに追試のデータが発表されるのではないだろうか。

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