2009-07-25

オバマ氏の医療改革について

高所得者に1%から5.4%の新しい税を掛けるという話になっているようである。保険業界のロビーに屈したという印象である。

アメリカ医療制度の問題は、医師資格が州ごとになっている点に始まっている。州ごとに免許が違うので、州内の医者の数を一定に保つ為に、免許が濫発されたり、厳しくなったりということで、質が一定になっていない。まともな医者を求めて、患者医者を探しまわることになる。結果的に、評判の良い医者の所には患者が集まり、ダメ医者の所には閑古鳥が鳴く。この、暇を持て余した医者が、医療過誤裁判で、売れている医者の足を引っ張る側に回る。

医療過誤裁判医者が負けるようになると、医療過誤保険保険料が高騰し、売れない医者市場から排斥されるので、結果的に、ダメ医者は排除されるという結果に繋がったが、今度は、一度値上がりした医療過誤保険保険料を維持しよう、あるいは、搾り取れるだけ値上げしようという話になってしまった。

医者として20万ドル年収があっても、医療過誤保険保険料に18万ドル支払い、手元に残るのは2万ドルという状態では、アメリカでは貧困層に分類される。年棒2万ドル仕事というと、時給9ドル75セントで一日8時間、週5日、52週間働いたのと変わらないとなる。夜勤救急対応で夜中に叩き起こされる事を考えると、時給8ドルウォルマートの店員でもやった方がマシだし、自動車工場ライン工の方が、遥かに高額の時給を得られる上に、医療保険会社負担で得られる事になる。医者の成り手が居なくなっているのである。

これらの構造こそがアメリカ医療問題点であり、高所得者に課税して、そのお金メディケアメディケイドを拡大しても、本質的な解決にはならない。

保険業界の献金攻勢にすっかり骨抜きにされてしまったと見られるのも、仕方が無いであろう。

保険業界はCDSで大火傷をしており、国費を投入して救済してしまった以上、いまさら潰すわけには行かないというのもある。投入した国費を回収するには、保険業界には今まで以上に利益を上げてもらわなければならない。医療過誤保険医者からがっぽり保険料を毟り取るというのも利益の一部であるし、企業従業員に出している医療保険を請け負い、利ざやを抜くというのも利益の一部である。病院が、病気をした国民から、医療過誤保険料破産によって踏み倒された他の人の医療費分を上乗せした医療費を徴収し、自宅やクレジットカードのローンを支払えなくなって破産に追い込むことになったとしても、医療保険部門の売り上げは好調であり、好調な部門の売り上げを減らすような事には、献金を使ってでも反対するという話になる。

CDSを買っている資金運用部門が大赤字であっても、本業保険部門が好調ならば救えるというのが保険業界救済の建前であるが、保険部門の好調さが資金運用部門の大赤字の原因では、合成の誤謬が暴走している状態と言えるのであった。

問題を解決する為に、政治権力民主党に与えたのに、それをまっとうできないばかりか、献金を受け取って私腹を肥やしているようでは、支持率は低下していくであろう。

国民は、見ていないようで見ているし、気づいていないようで気づいている。身近な人や支持者を欺く事は出来ても大衆を欺く事は難しい。

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