2009-06-16

http://anond.hatelabo.jp/20090616122404

その「科学的」の扱いをめぐってゴタゴタしてるという話ではないのか…?

そういう話じゃないんじゃないか? 水伝科学的にでたらめってのは、科学的には争う余地のないところで。

水伝バッシングすることが政治的・社会的倫理的にどういう意味を持つのか、というところにゴタゴタがある。

たぶん引用元の人も同じ意味で言ってる。

この二つの問題は、少なくとも科学の側からは明確に分けられるし、科学者は自覚して、そこを分けて振舞うべきなんだけどな。

それはおいといても、科学者ニセ科学批判は、「科学者としての仕事はそれで終わり」の範囲を超えてるのではないかと思う。

ほとんどのガチ科学者は、こんな問題見向きもしないでしょ。科学研究とは無関係だし。

こういう態度じゃもうダメだよね、科学者社会的責任果たさなきゃっていうのが現代の科学技術社会論とかの主張で、それに対する支持はどちらかというと大きくなりつつある。もちろん事実として、見向きもしない科学者は多いけどね。

こういうのを騒ぐ人って、だいたいは科学ライター志向の人で、科学者じゃないからなあ。

他の人も言ってるけど、菊池誠さん(阪大教授)とか、最近科学者もけっこう発言するようになってきている。日本物理学会ニセ科学問題にどう対処するかってセッションも開かれたぐらいだし。

多分以下のようないくつかの問題がからみあっているのでややこしくなっている。

まあ、それを解きほぐすのが倫理学仕事だといえば、その通りなんだけどね。

  • ニセ科学界隈の現象に関して、科学的に正しい言明の大部分は「これは科学的に正しいとは言えない」という形でしか表現できないということ。
  • 科学者にとっての「「これは科学的に正しいとは言えない」ということ」のかなりの部分は、(ニセ科学の積極的推奨者でなくとも)一般市民に共有されてないし、ちょっとやそっとの「啓蒙活動」なんかではどうしようもないということ。
  • 一般市民が「科学(者)が満たすべき知的誠実さ」を持つことが倫理的要請されるというのは必ずしも自明ではない(というか恐らく倫理学者からさえも支持されないであろう)こと。
  • 一般市民が「「科学的に正しいとは言えないこと」を言ってはいけない(あるいはそれを根拠にした意思決定をしてはいけない)」ということが倫理的要請されるかどうかはやはり必ずしも自明ではないこと。
  • 社会的活動が満たすべき、倫理的規範を満たしていないこと」を一般市民が行ってはいけないというのは確かに、疑いなく倫理的要請されるが、これはトートロジーだから当たり前。「社会的活動が満たすべき、倫理的規範」が何であるかについてはやはり必ずしも自明ではないこと。

追記

元増田の言ってることは「戦線を限定すべき」という意味では大賛成なんだけど、「倫理」とか「知的誠実さ」とか言わない方がいい。話が拡散するので(実際スレッドを追うと拡散してる)。

単に「科学的手続きを踏まえていないものを科学と呼ぶな」って言えばいい。

科学的手続きとは何か」というのはある程度わかりやすく説明できる。>その手の本はいろいろ出てるので興味のある方は読んでください

ややこしいのは、「科学的手続きを踏まえていないものを科学と呼ぶな」というパフォーマティブな言明は何を意味するのか、ということ(誰が言うべきか、そもそもなぜ言うべきなのか、言ったら効果があるのか)。

で、さらにややこしいのは「じゃあ科学とは呼ばないよ。科学的手続きを踏まえていないものを「世界根本原理」と呼んで広めることにするよ」となったときにはもう、「科学的手続きを踏まえていないものを科学と呼ぶな」という言明は無効化されちゃう。そこでさらに深追いして「科学的手続きを踏まえていないものを口にするな」なんて言っちゃったら我々の日常コミュニケーションのほとんど全てがひっかかっちゃうからね。

法律に触れるようなことはもちろん法律で裁けばいい。でも、そうでないもの、グレーゾーンなものは難しいよね。「ある人を救うためにナイフで刺すことがベストな方法」って思ってる人が本当に刺しちゃったら犯罪ってことで処理されるし、ある種の代替医療とかはそれに近いところまできちゃってるのかもしれないけど、水伝なんかはそうとは言えないからね。

確かにあれで授業を受けた子どもは、色々な意味で「機会損失」があるわけだけど、それは法には触れないし、「科学」というラベルを外せば先の批判は無効化されるから、あとは「議論」していくしかないんだよね。科学に対する価値観の違う者同士で。

記事への反応 -
  • というか、「倫理」を持ち出したらたいていの科学者はアウトだろ。 科学者が科学の発展とやらのために何をしてきたかを考えてみればいい。 人体実験やった奴、独裁者と結託した奴...

    • というか、「倫理」も持ち出せないようなことしてる科学者がニセ科学なんぞ批判できるのか?

      • というか、「倫理」も持ち出せないようなことしてる科学者がニセ科学なんぞ批判できるのか? 科学的な誤りの指摘は出来るだろ。科学者の科学者としての仕事はそれで終わりなんじ...

        • 科学的な誤りの指摘は出来るだろ。 その「科学的」の扱いをめぐってゴタゴタしてるという話ではないのか…? それはおいといても、科学者のニセ科学批判は、「科学者としての仕...

          • その「科学的」の扱いをめぐってゴタゴタしてるという話ではないのか…? そういう話じゃないんじゃないか? 水伝が科学的にでたらめってのは、科学的には争う余地のないところ...

            • その「科学的」の扱いをめぐってゴタゴタしてるという話ではないのか…? そういう話じゃないんじゃないか? 水伝が科学的にでたらめってのは、科学的には争う余地のない...

              • # 一般市民が「科学(者)が満たすべき知的誠実さ」を持つことが倫理的に要請されるというのは必ずしも自明ではない(というか恐らく倫理学者からさえも支持されないであろう)こ...

            • ニセ科学批判の元締めって菊池教授じゃないの?

              • 元締めって表現はどうかと思うが、あの人はプロの科学者としての知識を生かしたSF屋としてふるまってるんじゃないかな。 たしかアシモフとか科学の啓蒙書書いてるよね。ああいう...

                • 日本では元締め的存在といっていいんじゃない? ニセ科学って言葉を広めたのも菊池教授らしいし。 海外では知らんけど。

                  • 日本だと、fj.soc.pseudo-scienceと菊池教授ってどっちが先立ったかなあ。 まあ、海外ではこの分野はすごく昔からあるね。

            • 水伝をバッシングすることが政治的・社会的・倫理的にどういう意味を持つのか、というところにゴタゴタがある。 この二つの問題は、少なくとも科学の側からは明確に分けられるし...

    • 何言ってんだ。過去の科学者にアウトな奴がいるからこそ これからの科学者は「倫理」を持ち出さなきゃなんないんじゃないか。 発見や研究が引き起こす(しうる)ことに対して、どう...

    • あなたが言う科学者コミットしている反倫理的な内容と、ニセ科学者が犯している倫理的な誤りは別物。それでは議論のすり替えにしかなっていない。

    • むしろ「ニセ科学の人」の方が人柄的にまっとうで、 「科学の人」の方がレイシストだったりするからなお大笑い

    • 科学者「僕たちは嘘はついたことないよ! 信じて! 大量虐殺の過去を持ち出すのは議論のすり替えだよ!」 だいたい大量虐殺に手を染めた件についてほっかむりしてるのが知的に...

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