[2009.3.27]
派遣業の許可基準の厳格化。
これまでは、資産から負債を引いた額が1000万円以上ある黒字企業ならば許可されていたのが、2000万円以上で、かつ、1500万円以上の現金・預金を持っていることとなり、同時に、これまで5年に一度だった派遣元責任者講習を3年に一度にするという話である。
しかし、派遣制度の根本的な問題は、雇用の調整弁である派遣労働者は、無期雇用者に比べて退職金や保険年金や食費補助や交通費補助といった福利厚生が無い分、高給でなければならないのに、無期雇用者よりも低い額の賃金しか受け取れていないという点にある。
さらに、工場立地法や、建築基準法等による作業場面積制限によって、人口密集地、すなわち、派遣労働者となりえる若者の居住地での職場を無くしていること、地方の工業団地のような、居住費を負担しなければならないような場所に工場が移転していて、派遣のような流動性の高い労働者の為の居住施設を確保する為に、どうしても寮を所有する地元の派遣業者を噛ませて多重派遣にせざるを得ない点に、問題がある。
そもそも、地方の工業団地に工場が移転していったのは、そこで無期雇用の労働者を雇い、工場周辺の土地を住宅地として開発していくという目的があったのに、派遣労働者を雇い、派遣労働者向けの寮を建て、派遣労働者向けのコンビニを作るという程度で終わってしまっている(cf.[2008.6.10])のでは、高速道路を引っ張り、インターチェンジを作り、工業団地を造成した意味が無いのである。
高速道路や工業団地を作る為の補助金は欲しいし、工場の法人税や労働者の所得税は欲しいが、地域に有権者が増えると、選挙に差し障りが出てくるからというニーズに、派遣労働者という制度は、ぴったりと当てはまっているとも言える。
住民票を持ってこないか、あるいは、住民票を持ってきたら、即座に寮を運用している地元の派遣業者から、寮で不都合があったので派遣契約を終了して欲しいと派遣元と派遣先に話を通して追い出し、代わりの派遣を雇い入れるという手口が常識化して、ようやく、地方に作られた工業団地は有効に機能し始めたとも言える。
"派遣は社会の最底辺"、"働いたら負け"というのは、こういう現実を体験した人が、実感として持つ感情なのである。
日本人が働いてくれないから、外国人労働者を呼び込もうと主張している者が居るが、日本人が働かない理由を理解していないから、そのような主張が出てくるのである。そのような主張をする者は、一派遣労働者として、ド田舎で、寮と工業団地を往復するだけの日々を体験してみるべきである。