今22歳で大学生。そんな俺が考えてみた。
「俺が生きた時間はどれぐらいだっただろう。」
22年間??睡眠時間とかこんな式で今までの人生を考えてたんだ。
だけど昨日驚くべきことに気がついちゃった。
俺は金がある。友達がいる(あとで分かるけどこれはいるつもりでいた)。
在学中に彼女も出来た(今は別れた)。
無事単位もとり終わった。よさげな就職先もある。遊んだ。遊びまくった。
だけどむなしいぜ。なんだかわかんないけどむなしいぜ。
満足感のかけらも感じねえ。あるのはやりきった感じゃなくて、やりおえた感だ。やっと終わったか。
やれやれ、そんな感じだ。
俺は成功しているはずなのに!
「なんで!?」
悩んで悩んで悩みつくしてたどり着いた結論は、俺は生きていなかった。生命活動はしていたけどね。
生きていたのは俺ではなくて、「思考と打算」(以下、打算君と呼ぼう)だったんだ。
打算君の役割は打算的に考えることだ。
そして極力パワーを使わずに便益を得ることが打算君の目的なんだ。
打算君はよくこう発言をする。
「もっと効率よくしよう」「もっといい方法はないか」「もっと早く」
目に見える積みあがっていくものを見ておれはこういった。「打算君、もっときみにまかせるよ。」
打算君はここで牙をむく。隙あり!と。
打算君はこう発言する。
「やり方を今まで打算的に考えてきたけど、今度は目的も打算的に考えてあげるよ。」と。
俺はこういった「悪いね。ありがとう。まかせるよ。」と。
(今考えればここが譲ってはいけないところだった。)
打算君に全権限を与えるとどうなるか。人の情を無視するんだ。利用利用利用利用。
世の中のありとあらゆるものを物とみなし、利用する。人=物の関係になる。(予断だけど物と者っておなじように「もの」って発言するのに日本語の奥深さを感じるね。)
打算君はこう発言する。
「友達?いいや人脈だ。恋人?いいや性欲処理係だ。仕事?金のためだよ。勉強?単位のためだよ」
俺はこう発言する。
「打算君、人情というものを考えようぜ。」
打算君はこう発言する
「黙れくずが!てめえはひっこんでろ。世の中なんてのは利用するものとされるもので出来てんだよ。
負け組みになりたくなけりゃ俺の言うことを聞いていとけ。勝ち組にしてやるからよ。成功させてやるぜ」
(個人的には打算君の人格化と呼んでる)
これに言い返すことが出来ずに、そうですよねとうつむきながら、そして自分の未来に不純物の混じった期待しながら俺は打算君を肯定した。
それから俺の生活は続いていく。今までと違った生活が始まる。
人から責められることは減っていく。嘘をつくからね。自分を守るためならがんがん嘘をつくからね。
自分を大きく見せようとする。目指せカリスマ!
金儲けのために株をやる。スイングだよね時代は。
人脈作りのために友達を作る。
自慢のためにかわいい彼女作りだ。
おばあちゃんがすわりたそう。だけど俺も疲れてるから無視で。
自分のために空気を読む。
そんな生活が何年か続いた後、ある疑問が浮かぶ。
やってるときはいいんだけど振り返ったときのこの虚しさはなんなんだろうね。なんか人生が空虚に感じるんだ。それになんだかとても不安でいろんな人に敵対心を抱いてる。警戒してる。
考えた末にある仮説が思い浮かぶ。俺はおずおずと聞いてみる。
「打算君聞きたいことがあるんだけど、君って偽りの感情を作り出せるんじゃないのか?怒りとか、不安とか優越感とか満足感もどきを」
打算君 ギクッ!
俺はこう聞いてみた
「誤魔化そうとしてないか。それで打算的な生き方が最高だって思わせようって。さすがに、何も感情が起こらなければ行動しにくくなるけどさ、そういう偽りの感情作り出せば行動しやすくなるよね。動機になるよね。やる気が出るよね。つまり、思考によって感情を作り出せるんでしょ?違うかな。ちょっと本当の感情で言ったらどれぐらい俺は感情を得ているわけ。どれが本当の感情なのさ。」
打算君はそっと差し出す。そ知らぬ顔で。
「え!!!!こんなもんなの?まじで?????米粒じゃん。嘘!じゃあ・・・えっといつから・・・・・
いつか君に目的を任せたときからか。なんだよこれ。うわーーー、やんなるわ。って俺の責任じゃん。そうか目的をきみにまかせるとこういう結果になるのか。周りに人がいてもいくらいろんなものを手に入れても満足した気になってみてもそれは偽りの感情で構成された偽りの満足感。それしか存在せず、自分の人生を振り返ってみて、初めてその空虚さに気がつく。何だこれ打算君、君は俺のためをまったく思ってないね。ひどいじゃないか。」
打算君はこういう
「だまされるほうが悪いんだ。俺にとっちゃお前も物なんだよ」
俺は叫んだ
「ふざけるな!」
打算君から目的を決める権利をはぎとり、ようやく俺が生きることができるようになった昨日。
何をすればいいのか分からない自分に気がついた。それもそうだ打算君が全てを決めていたのだから。
そしてこんな質問が浮かんだ。
「俺が生きた時間はどれぐらいだっただろう。」
打算君に目的まで決めてもらうようになったとき、打算で生き始めたあの時。あのころから俺は死んだ。
俺は独り言を言う
「きっかけはなんだったんだろう。先生に怒られるのが嫌だったあのとき。友達が苛められていたけど関わったらこっちも苛められると思ってあいつを無視したあのとき。金持ちの友人やホストの話を聞いたあのとき。自分の友達が少ないことを知ったあのとき。格差社会という言葉を知ったあのとき。大学の進学を考えたあのとき。人から裏切られたあのとき。からかわれ苛められたあのとき。悪口を言われて仕返しを考えたとき。宿題を提出するのは移したほうが楽だと知ったあのとき。打算君に依存したとき、俺は死んだ。」
「高校生1年生とき、すごくつらくて楽なほうに流されたかったあののときから俺はずっと打算的に生きてきた。俺は6年間を無駄にすごしてきた。打算的に生きてきた今までの6年間ほとんど何もなかった。俺は今から生まれ変わろう。16歳からはじめよう。まずは人をしっかりと人としてみることからはじめてみよう。単純だけど俺はそんなこともできていなかった。いや・・・・・・これをするにはすごい根気が必要だ。決して楽な道ではない。人の気持ちを考えて人の立場を考えて人の過去や苦痛、幸福感まで考える。難しいことだれども、やろう。俺は今日から変わるんだ。」
そう思い始めた次の日つまり今日のエピソードを最後にひとつ。
今日電車に乗っていたんだ。おじいちゃんが前にきた。今までなら無視していたけど俺はこのとき自分のやりたいことが、素晴らしい目的が見えた。心が教えてくれた。
席を立ってぎこちなく「どうぞ、座ってください。」といってみた。
おじいちゃんは顔をくしゃくしゃにして
「ありがとう」といってくれた。
なんか、なんか知らないけど涙が出た。悟られないように寝たふりをして。胸の熱さに泣いた。
人の温かさに泣いた。
誰が信じるだろう。このおじいちゃんのたったひとつのありがとうが俺の高校1年生からの6年間で
一番うれしいことだなんて。
俺自身が物扱いされることもあるだろう。迫害されることもあるだろう。
だけどこれからの人生は輝く気がしたんだ。まずはみんなにあやまろう。
そして、こんな俺を見捨てないでくれた人々に感謝を送ろう。
そして、自分に芽生えた親切心という宝物を大事にしていこう。そんなふうにおもった。
注釈
これはフィクションです。
テーマは人生と打算ですかね。打算も大事だと思うんですよね。世の中面倒くさいこと多いし、純粋な気持ちだけじゃだまされるし。でも、意図的に自分見つめて親切心見たいのを多少は発揮したほうが良いかなっておもいました。それと自分の純粋な気持ちを尊重してあげたほうがいいと思います。自分も打算だけで生きてた時期ありますけど振り返ると乾いた砂漠ですよ。やってるときはそこそこいいように感じたんですけどね。あとおじいちゃんに席ゆずって、そのときのありがとうに感動したのは本当です。