2008-09-22

弱い者の生態

テレビをつけると笠井アナが仕切りを間違えている。いつも通りの朝、と言っていいかもしれない。以前、仕事していた頃は笠井アナがしくじるたびになんだか安心できた。だけど、今では毎日はらはらしながら笠井アナを見守っている自分がいる。つまり、自分と重ねている、彼の失敗を。

けさは七時前に起きた。起きたらすぐテレビ星占いのコーナーをチェックする。今日の僕の星座は4位、ラッキーアイテムがないかと無意識に部屋を見渡す。くすんだ部屋には段ボール図書館から借りてきた本ばかりだ。

星占いをみて仕切り直しのつもりで冷蔵庫からグレープフルーツジュースをコップに注ぎ、タバコに火をつける。ささやかな朝食がわり、朝のジュースだけはすばらしいと毎日思う。パソコンを開くと転職サイトからメールが3通届いていた。ニュースを見ながら求人を確認する、だけど頭に入らない。

たくさんの言葉が画面に出てくる。営業、企画、未経験者歓迎、語学を活かす、不動産、IT、コンサルティング。いろんな用語が出てくるけど、どれもこれも全くイメージが浮かんでこない。前の職種すら。自分がこれらのことをやっている姿が全く想像できない。想像力は大切だ、小学校でよく先生が言ってた。実体験で考えても先生言葉は正しいと思う。これまでの人生で自分の想像が及ばないところまで到達できたことがないから。そして、今、僕はちょっとした想像力に不自由している。

現在無職だ。もう2年になる。無職とは英語で言うとunemployedだったりもするけど、わかりやすくout of workとも訳される。つまりworkという「場」の外にいるということだ。なにをそんなわかりきったことを、というかもしれない。そこなんだ、違いは。わかりきったことそのこと自体が重いんだ。わかるかな、普段感じないはずの大気圧が肩にみっしりと食い込んだような感覚

仕事はしないといけない、義務だ。だが、将来の絵をかけない。図書館転職の本と資格の本を借りてきて読み終えた、8冊。だけど想像力は刺激されなかった。期待してたのに残念だ。会社を立ち上げる本も借りたけど、社長をしている自分のイメージが生まれてこなくて本を閉じた。想像力が生まれないなら、今いる場所を妄想の足場にしてみるしかない。そんなとき陥りやすい罠なんだけど、できれば格上の相手を乏して自分の身を守るような立ち回りをout of workの自分がやってしまうことがあるかもしれない。たしかに小ずるい。だけど、逆に問いたい。相手をたたえてどうなる?相手をたたえたところで何が得られる?

実は準備はもうできてる。どんなことでも全力でいける準備。体力作りに腕立て伏せなんてことも実は毎日してる。だけど、"work"の外縁をうろうろとふらついていて、自分が何をしたいのか毎日問い詰めても出てこない。要は勇気はある、だけど勇気を向ける先が見あたらない。好きを貫きたい、しかし好きなもの自体がない。というか、挫折したばかりなんだ。人生はたしかに神ゲーだ、だけど僕はゲームをするとき勇者としてしかプレイしたことはなかった。村人Aとしてプレイしたことはない。

さて、どうすればいい。しかたない。人生に詰んで投了するわけにもいかない。11時になったら図書館にいって新しく本を借りてみよう。ついでに髪をバッサリ切ってみよう。証明写真も撮らなければ。職務経歴書ももう一度見直してみよう。

たしかに弱い方が強いかもしれない、批判はされないからノーガード戦法で一方的に文句をたれつつ、いつの間にか強い方へとチェンジできる可能性だってある。何もないから一方的に攻撃はできる、だけど何もないことそのものが重い、すでに十分なハンデだ。そんな気持ちを振り切って自分を騙し騙し「軽さ」へとシフトさせてみる。なんとか行動へと意識を向ける。こういったまやかしめいた発想の転換をしてから僕はこれから外出の準備を始める。もう4時間たった。

(ここには自分の書けることは、できる限りすべて書いてみた。以上です。)

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