2008-01-04

テレビの見方


僕はテレビはほとんど見ない。面白くないし、ネットのほうが同じ情報を効率的に得られると思うからだ。でも久々に帰省したのでテレビを見てみると、以前より面白いと感じるようになっていた。それはきっと僕のテレビの見方が変化してきたからだと思う。僕がどんな見方をするようになったかは以下の通り。

例えばバラエティー番組で、自分がその番組総合ディレクターになっていた場合、どのように指示をすれば良いか考える。何をどうすればより面白く、視聴率が稼げ、低予算で、社会貢献できる番組になるのか。取り上げるテーマはどうするか、使う役者はこれでいいのか、喋らせる台本に改良の余地はないのか、演出や舞台装置はどうか。観客はどのように集めるのか、そしてその反応に対してどのような指示を与えるのか。

そして今放映されるに至った映像は、携わる人々が何を意図し、何を考え、何を感じて作ったものなのかに思いを巡らす。どうしてこの場所を取り上げることにしたのか、これを取り上げると視聴者がどのように感じるだろうと製作者は予想したのか、このシーンにこのタイミングでこの曲を使うことを選んだのはどのような効果を狙ってのことなのか。これ以上に効果的な曲を自分は提案できるのだろうか。毎回このタイミングレポーターがこういう一定の反応や行動をすることによって、どのような効果が期待できると考えたのか。ここでこのレポーターは何を考え、何を感じ、何を意図しているのか。こんな芸人は知らないけれど、彼のこの行動はおそらく彼がこれまでに培ってきた芸風やキャラを発揮するもちネタ的なものなのだろう。これをここで繰り出す時、どのような心理状況だろうか。表情、仕草、目線、声を調子、周囲の反応、これまでの発言、等、からどれだけ深く読み取れるだろうか。そしてこのときカメラがこのようなアングルからこのように撮影したのは、どのような意図があったのだろうか。カメラマンはこのときどう感じているだろうか。レポーターが苦労して登っているこのシーンを、カメラマンは両手でカメラを持って足元も見ずに同じ速度で登っているはずで、それはどんな状況だろうか。おや、引いたアングルになったらカメラが映っていない。ということはここで一端切ってカメラマンは見えない場所に移動したのだな。そしてまた1日後のシーンに切り替わる。この間に彼らはどのような行動をし、会話をし、感情を抱いたのか。彼らの服装や表情や発言や状況から読み取るヒントはないだろうか。そしてまたこのロケを横から見ている他の観光客らはどのように考え、感じているのだろうか。一瞬映る様子からどこまで分かるだろうか。

そして最終的にこのような形に編集されたということから、編集者がどのような意図を持っていたことが分かるのだろうか。カットされたものにはどのようなシーンがあるだろうか。時間前後させたのはどの部分であり、それはどのような効果を狙ってのものなのか。ロケ収録とスタジオ収録の映像の放映時間に占める割合はなぜこのタイミングバランスになっているのか。これが最も視聴率を稼げるバランスであると判断する根拠になったデータにはどのようなものが考えられるか。

またこれらの映像を見た時にスタジオ司会者ゲスト、等の人々は何を考え、何を感じ、何を意図したのか。今の発言は台本にあるのかアドリブなのか。どちらであるにせよ、それを考えた人はここでそれを言うことによるどんな効果を狙ったのか。たけしはなぜここでこのようなボケをかましたのか。それを見た周りのゲストや観客がどのように考え、反応し、結果的に番組空気にどのような影響を与え、長期的には視聴率や自分の芸人生活に対してどのような効果があると考えていたのか。そして実際には周囲や視聴者はどのように感じ、考え、反応したのか。そしてそれらの反応を見たたけしは、何を感じ、何を考えたのか。それらをたけしの表情、しぐさ、目線、その後の発言や行動からどこまで読み取れるか。なるほど、たけし自身はこの番組のくだらなさにうんざりしながらも、それなりには盛り上がるように何かしてやるかと思ってのさっきの行動だったのか。そして周囲には、これこそ反応しどころだと喜んで反応する人や、喜んで反応するふりをする人や、大げさに笑う人や、穏やかに笑う人や、冷たく笑う人や、面倒だから反応しない人等がいる。そしてそれらの中から、視聴者に見せたい反応をした人を写していたカメラ映像編集されて繋げられる。そして実際の視聴者の中では、ああいう人はこう反応し、こういう人はこう反応し、全体としてはこんな感じの影響になったのではないだろうか。このチャンネルと他のチャンネル番組を比較すれば、この時間にこの番組を見ているということからある程度は視聴者の傾向も絞れるだろう。

また、このタイミングで入るこの企業のこの商品のこのCMは、どのようなターゲットに、どのような効果を意図したものなのか。このとき視聴者の中には、どのように考え、どのように感じる人が、どのような分布で存在しているのか。製作者側の意図はどこまで成功し、どこまで失敗したのか。自分が改善案を出す立場なら、どのようなものにするか。そしてCMを入れるタイミングや長さ、そして入れる種類はどのようにしていくのが最も良いのか。そのためのデータはどのような切り口で集めたらよいのか。

このように周辺情報についても考えながら見ると、テレビはわりと面白かった。2時間も見たら疲れたけど。

色々な人の思惑がからむテレビ映像データ量が多い。そしてテレビニコニコ動画は結構近いなと思った。ある映像を取り上げて、テレビでは良く知られた芸能人コメントし、ニコニコではユーザーコメントする。視聴者はその映像コメントを合わせて楽しむ。ニコニコでも自分ではコメントしない人が多数な訳だから。そうしてみると、ニコニコテレビを超えることは無いようにも思える。ユーザー登録不要だし、自分で見る映像を選ばなくても、皆が楽しめそうなものを選ぶプロが毎日勝手に選んでくれるのだから。自分で選ばなくてもいいというのは、とっても楽だ。見る映像でも、夕飯のメニューでも。

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