■殻を集めている
何時からそうした行為を行うようになったのかは覚えていない。
毎日、卵を食べる。生卵。
仕事を辞して、食欲を無くし、外にも出ず、細々とした腕も脚も白磁のように白くなった。
殻を割るのは、不必要ではなかったからだ。
割れ方が多種多様であることに気づいたのはいつからだろう。
どれ一つとして同じ割れ方をする卵はない。
それはあらゆる面で似ていた。
割れた卵の殻をテーブルに並べる。一直線に。同じ列に。寸前違わぬように。
今私が行う唯一の仕事。
パワハラで心を壊した私における存在意義。
心は音もなく壊れた。
割れる卵に、鳴らない音はない。
音を鳴らすであれば、私の心も救うことが出来たのかもしれない。
今はただ殻を並べている。
からっぽの心と共に。
ツイートシェア