2014-01-11

あの日、糸に絡まった鳥を助けた

朝、会社へと出社する途中、道端の木でばたばたと音が聞こえた。

見ると、どうやら鳥が糸に絡まり、木にひっかかり逃げられずにもがいているようだった。

手で助けてやろうとしたが、糸が思いの外頑丈でどうにもならない。

仕事に遅れてしまいそうだったが、一旦家に引き返し、ハサミを取ってきた。

鳥を押さえて、鳥の足から遠い糸をひとまず切ると、その鳥はあっという間に逃げて屋根の向こうに消えていった。

その日、震災が起きた。

地震なんてなんてことない。いつものことだ。

でも、今回は違った。

原子炉が爆発した。

1万年も汚染されるのだろうか。

生まれたばかりの俺の娘はどうなってしまうのだろうか。

今日助けたあの鳥はどうなってしまうのだろうか。

俺は今まで生きてきたこと、今までやってきたことのすべてが無駄になってしまった気がした。

あれからもう何年も経った。一万年には程遠いが。

やっと前に向かって歩いて行く気力がでてきた。

これからどうなるかわからないけど、俺は娘のためにがんばる。

  • え?一万年汚染されて生きてく意味ないんでしょ? 娘も可愛そうじゃん、そんななかで生きさせたら。 意味ない人生早く終わらせたほうが良くね?

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