朝、会社へと出社する途中、道端の木でばたばたと音が聞こえた。
見ると、どうやら鳥が糸に絡まり、木にひっかかり逃げられずにもがいているようだった。
手で助けてやろうとしたが、糸が思いの外頑丈でどうにもならない。
仕事に遅れてしまいそうだったが、一旦家に引き返し、ハサミを取ってきた。
鳥を押さえて、鳥の足から遠い糸をひとまず切ると、その鳥はあっという間に逃げて屋根の向こうに消えていった。
その日、震災が起きた。
でも、今回は違った。
原子炉が爆発した。
1万年も汚染されるのだろうか。
生まれたばかりの俺の娘はどうなってしまうのだろうか。
俺は今まで生きてきたこと、今までやってきたことのすべてが無駄になってしまった気がした。
あれからもう何年も経った。一万年には程遠いが。
やっと前に向かって歩いて行く気力がでてきた。
え?一万年汚染されて生きてく意味ないんでしょ? 娘も可愛そうじゃん、そんななかで生きさせたら。 意味ない人生早く終わらせたほうが良くね?