2010-02-14

夏休みの終わりに

 缶ビールを開けて飲む。その味は風呂上がりの時よりも悪くなっている。部屋に戻ると天井電気は付いておらず、机のスタンドが光るのみ。つけ忘れていたとか電気が切れていたとかではない。日本式の照明は就寝前には適しておらず、間接照明のように位置が低い物のほうが好ましい、というのはネット記事の受け売りだ。

 ふと思い出したのは母の事。私がまだ実家暮らしだった頃、二階の両親の寝室に入ると母はデスクスタンドのみをつけてタロット占いに興じていた。ある種の不気味ささえ感じながら、私は照明のスイッチをオンにした。電気くらいつけなよ。母は苦笑い。

 私と母は同じ行動を取っていたわけであるが、母が精神病棟に入っていた経験がある事を考えると、その事に少し抵抗を覚えるのは仕様がないと信じたい。またビールを一口。苦さが際立つ。

 明日はバレンタインである。いや、今日か。チョコの一つや二つくらい貰えるだろうか。いままで彼女などできた事はない私にとってそれは大変に関心のある事なのだが、全く興味を持てない事でもある。面倒なことだ。

 深夜1時にもなると外は真っ暗で何も見えない。片田舎に住んでいる事は重々承知だが電灯の一本すら見えないのはどういうことだろうか。空を見上げても曇っているのか星は見えない。大体、北陸のほうはこの時期あまり晴れないのだ。冗談ではないく、ここ一週間、太陽を拝んですらいない。モラトリアムの終わりは世界の終わりと同義なのか。ビールをグビリ。美味し。夏の終わりのかほり。 水滴だらけの窓ガラス

 この部屋ともあとひと月でおさらば。結局コールドプレイポスターを支える画鋲の穴のために敷金はどこへ行ってしまうのか。壁紙となるのか管理人の飯のタネとなるのか。

 社会人社会人ってなんだ。会社の犬かはたまた家畜か。巷で話題の社畜の身分とやらに私は落とされてしまうのか。それとも案外この4年の夏休みのようにやんわりはんなりと暮らせるのか。人工少女はやる時間はあるのか。からあげうめえ。ビール苦い。あれ、からあげもうないの?

 残ったビールを一気飲み。一缶でふわふわ頭は安上がりの証拠だ。弱いなどと。決して弱いなどと。

 こたつから出てベットに入ると、当たり前だが毛布はまだ冷たかった。大丈夫。すぐに暖かくなるさ。大丈夫

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