2009-06-21

末期、少女

 『月蝕カルマ水』を売り歩く主人公=真市。

 インチキにすがる人間の弱さを嫌悪しながらも、

 それを革命するほどの強さもなく――

 おのれもまた弱者のひとりでしかないことを彼は理解し、

 生きている。

 いっそ究極の愚者になりたい……

 お安い救済に溺れてしまえる阿呆でありたい……

 そう思いながら、真市は月蝕カルマ水を売り歩いている。

 『カルマトシ』を希求する人々。

 妄想めいた奇妙な告白。

 義妹との淫靡な関係

 フラッシュバックする記憶

 自殺した義姉がソファに埋もれて笑う『赤い部屋』。

 カレイドスコープ的混乱のなかに、真市はおのれをすりつぶしていく。

やがて真市は、弱者たちが集い暮らす『廃墟コミュニティ』へと辿りつく。

放棄された鉄道線路を遡行し。

草に埋もれた道しるべを探し。

きしむ鉄橋を歩み。

長いトンネルを抜け。

時間を超えるかのごときみちゆきの先に、

 その廃墟はひっそりと息づいていた。

自分たちを否定する世界を逆否定し、

 世界を閉ざす事で世界を作り出そうとする少女たち。

 そこにあるのは弱者たちのシェルター

 敗北者たちの王国世界の果てであった。

真市は救済のかけらを見出す。

だが、彼らはやがて『新興宗教』と名づけられ、

 糾弾され、侵略され、蹂躙される事となる。

世界の条理がふたつの世界の両立を許さないのなら。

 あくまでも弱者を否定するのなら。

 ならば世界の条理を終わらせてしまおうじゃないか。

 真市たちのテロルは何者に対して向けられるのか。

 社会構造にか?

 運命にか?

 カミサマにか?

あるいは自分自身に――その銃口は向けられるのかもしれない。

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