この「蜘蛛の巣」に喩えられたネットの中には、私が出会うべきコンテンツが必ずどこかにあるはずなのだ。そのページは、リンクという名の見えない糸を密かに張り巡らせて、私が手繰るのを待っている。私の目の前のマシンのメモリにロードされる日を待っている。私も、偶然、若しくは必然として、そんなページに辿り着くことを期待しつつ、自らも見えない糸の網を広げつつ、クリックというたぐり寄せ作業を続ける。
でも、辿り着かないんだ。あるとき見つけた、心に傷を負った女の子のサイトは、私の探しているものにとても近いものだった。そのときはまさにそれだと思ったし、事実、あの短い期間だけを考えればまさにそれだった。私たちは恋をし、求め合い、触れあって、やがて傷を深め、別れた。ほんのひととき、半年ほどのオアシス。結果論でいえば、そこは私の探していたものではなかったし、結果論でいえば、私は辿り着いていなかった。
たぶん、そこはきっと、とても近いところにある。実は毎日毎日足繁く通っているサイトの隠しリンクから行けるのかもしれない。もしかするとなんとなくクリックすることを避けているその先に扉があるのかもしれない。わからないけど、近い気がする。2,3クリックで行ける気がする。その先にあるのは恋かもしれないし、恋ではない出会いかもしれない。仕事かもしれないし、一生の学問かもしれない。あるいは何かのダークサイドかもしれないし、スピリチュアルな何かかもしれない。何かはわからないが私にとって重要な何か。既に近くにある何か。でも、辿り着けなければいくら近くても意味がない。
ひょっとしたら今晩、うとうとした拍子に偶然クリックしたそのリンク先に、それはあるのかもしれない。その確率はしかし、一体どれほど天文学的な数字になるのだろうといぶかしがりつつも、パソコンの前からなかなか離れることができない。
頑張って!
ありがとう!頑張るよ!(どう頑張ればいいのかよくわからないのだけど!)