どこで生れたかとんと見当がつかぬ。
何でも薄暗くじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。
吾輩はここで始めて人間というものを見た。
しかもあとで聞くとそれは増田という人間中で一番獰悪な種族であったそうだ。
この増田というのは時々我々を捕つかまえて煮にて食うという話である。
しかしその当時は何という考もなかったから別段恐しいとも思わなかった。
ただ彼の掌てのひらに載せられてスーと持ち上げられた時何だかフワフワした感じがあったばかりである。
掌の上で少し落ちついて増田の顔を見たのがいわゆる人間というものの見始みはじめであろう。
この時妙なものだと思った感じが今でも残っている。
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