僕がまだお子様だった頃は、海ってのは何か陽キャ的なことをすべき場所だと思ってた。
でも違った。海は何も強いない。
砂浜に寝転がってただ雲がゆくのを眺め、日射が体を焼いている心地よさに浸るだけでよかった。
適当なところで切り上げて、海に入り、水に浮いて、また空を眺めながら波に身を任せる感覚を味わえばよかった。
体を動かしてみたくなれば、泳げばよかった。
体が冷えてきたら砂浜に戻り、文庫でもスマホでも開いてぼんやりと活字をぽつぽつ拾えばよかった。
腹が減れば、適当に身支度をして、手近な店で海鮮丼かハンバーガーを平らげればよかった。
あとはただ潮風を浴びていればよかった。
それだけで、ちゃんと夏を過ごしていると思えた。