心が震えるような恋って、
道ばたにぽろっと落ちていて、
うっかりしていると、
人は年を取ると、なるべく道ばたに落ちている恋を、
うっかり拾わないように注意して歩くようになる。
つまずいて転ぶと、なかなか起き上がれないし、
つまずいて膝を擦りむくと、
一生消えない傷になったりする。
治り辛い年齢だからね。
たまによそ見して歩いていて、うっかり道ばたに落ちてる何かを見ようと、
腰をかかげて、よっこらしょっとと見つめてみると、
ああ、
こんなところに、
こんなに綺麗な花が咲いていたんだなって、
改めて気付いて、
この年になるまで、
ずっとその道と、そこにあるものに気付けなくて、
今この道を歩き出したから、今だから見つけられたんだって思えて、
見つけたのが遅すぎたんじゃないかと、
自分の歩いて来た道を悔やんだりする。
もし私が、この花を摘んで帰る事が出来なかったとしても、
誰かが、またこの花を見つけて、
こんどは上手に摘んで、そしてその子の家で、
美しく咲き続ける事が出来たなら、
たとえ私が今この花を摘む事が出来なくても、
花は咲いた意味があったのだと思う。