週五でおっさんと毎日二人でおっさんのマンションでおっさんのパソコンに向かっている。
仕事をしていると言うと語弊があるけど、まあ今回は仕事の事はどうでもいいとして、問題はおっさんである。
ぼくは昔から引きこもり体質であって、土日は基本家でネットかゲームか読書、
出かければ歩いて30秒のコンビニ、旅行といえばネットカフェに朝までいる程度。
なんというか必然的に職場が一緒のおっさんとしか会わない。おっさんとしかしゃべらない。
決しておっさんが嫌なワケではない。このデキるおっさんを尊敬している。
仕事も、客先に打ち合わせに向かうのはおっさんであって、ぼくはマンションで一人おっさんを待つ。相手がおっさんであっても待つ身はつらい。
そのためぼくは人前に出ることは無いので、仕事でもおっさんにしか会わない。
おっさんはよくご飯をおごってくれるし、話も興味深いし、給料も仕事以上にくれる。おっさんのヒモのようでもある。
それがもう一年半以上続いている。
おっさんのマンションの合鍵も持っている。おっさんの好きな女子アナを覚え、おっさんの好きなお菓子も知っているし、
買ってくればおっさんが喜ぶコンビニスィーツも心得ている。おっさんはカレーが好きでおっさんは寂しいと死ぬ。
夢に見る人物もおっさんの割合が増えて来る。
前は健全な男子らしく女の子とか出てきてたのに最近はおっさんしか出てこない。
夢の中でおっさんと空を飛んだ。ぼくはおっさんより少しだけ上手く飛べる。
正直な話、ネットでヤラシイ動画みてるときもおっさんが脳裏に浮かび、思うように行かない。
しかも厄介なことに果てた瞬間が一番おっさんの主張が激しい。おかんに見られたような罪悪感が毎回ぼくを襲う。
学生時代憧れていた女子を思いだそうとしても、おっさんが主張してくる。
完璧に覚えている人ならいいが、うろ覚えだったら全員ちょっとおっさんに似てる。おっさんの面影がある。
そして翌日は変に意識しておっさんとの仕事に支障をきたす。心なしかおっさんもこっちを意識している気がする。これは自意識過剰か。
最後におっさんやコンビニ店員以外と会ったのは遠い過去のような気がするが、電話ならと思い、記憶を辿る。
でもコレもまぁおっさんみたいなもんなのでカウントされない。
酒の入ったゴリ氏は
「俺の心の隙間どうやったら埋まるんやろ?」
などとめんどくさい事を言ってきたので
「お前の心の隙間の埋め方わかったらメールするわ」
と言って流そうとしたのに
「俺の心の隙間の埋め方わかったらメールしてな!」
とか言って乗っかってきた。こんなヤツはカウントされない。
おっさんである。ちょっと自分探しの旅に出たいおっさんである。
とにかく、人とのコミュニケーションが極端に少ない。おっさんとゴリラしかいない。
人と会わないということは見た目にも気を使わない。
スーツも着ない。ヨレたシャツに変わって、ヒゲも滅多に剃らない。髪も2ヶ月以上切ってない。
しかも薄くなってる気がする。いやでも、こんなもんだよね。なんていうか元々薄いっていうか、季節の変わりめっていうか、
元々髪細いから、まったく劣化してないっていうか年齢的なアレじゃないし。
生え際を気にしつつ鏡を覗くと、そこにはおっさんがいた。
ワンカップ片手に鼻を赤らめ、街にくりだすしかないおっさんがいた。
しかもこれ「ぼうず、おっさんみたいになったらあかんぞ」とか言いそうな、
ダメな方のおっさんだこれ。