2010-03-08

ttp://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2010030802000049.html

「乾パンのように長期保存できて、しかもしっとりと柔らかいパンをつくってほしい」。十五年前の阪神大震災被災地に、栃木県の自社工場からパンを届けた秋元義彦さん(56)は、被災者の切実な声を正面から受け止めた▼試行錯誤の末、一年後に缶ごとパンを焼き上げる方法を開発、常温で最長三年保存できる「パンの缶詰」の商品化に成功。焼きたて同様の食感が特徴で、宇宙飛行士若田光一さんがスペースシャトルに持参し、飛行士が取り合うほどの人気だったという▼いま秋元さんが力を入れているのは、自治体企業などから缶パンを賞味期限一年前に下取りして、非政府組織NGO)の日本国際飢餓対策機構を通じて、被災地に送る「救缶鳥」プロジェクトだ▼ジンバブエ飢餓の支援やスマトラ沖地震津波新潟県中越地震など、これまで計十数万缶を届けてきたが、下取りの対象を大口顧客以外の個人にも広げる試みだ。大手宅配便の業者の協力も得られたという▼一月に大地震のあったハイチにも、近く三万缶を送る予定だ。輸送費の負担をめぐり交渉した外務省は、緊急の予算がないと消極的で、米国の貨物会社が引き受けてくれることになった▼秋元さんは災害現場で聞いた小さな声を決して聞き逃さなかった。その真剣さが地方パン屋さんを世界を相手にする会社に成長させたのだろう。

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