会社のとなりのビルに新しいラーメン屋がオープンして、さっそく食べに行ってみた。
はっきり言って、あまり美味しそうな店構えではないのだけれど、もし美味しければコンビニとすき屋ばかりのランチ生活に彩りが加わることになり、それはたいへんに幸せだし、仮にあんまり美味しくなかったとしても、それなりに月給をいただく身分なので700円くらいなら惜しくない。というか、もともとぼくの舌に設けられたハードルはすこぶる低くて、しかもそのハードルをくぐられようが、倒されようが、それはそれとしてゴクゴク飲み込めるという、ぼくはそんな体質の持ち主なのだ。
さて、そのラーメン屋で、一杯700円のラーメンに海苔増し、それに半ライスを注文した。しめて900円とちょっと。ランチとしては破格の金額だが、まぁ新たなご近所さんへのご祝儀的な意味もありつつ。腹も減ってたし。
で、出てきたラーメンのスープをひと口すすり、麺を吸い、そこでなにやら思索にふけってしまった。
いや、美味いんだ。普通に美味い。味としてはいわゆる“家系”と呼ばれるそれに分類されるのだろう。トンコツに、お魚のだしも入ってるのかな。しつこすぎず、あっさりしながらコクもあるし、チャーシューなんてとろとろだし、スープがしっかりからんだほうれん草も美味い。麺もしっかり太くてぼく好み。
でも、「うまっ!」ではない。夢中になるほどではない。「ふむふむこれは“家系”だね」「トンコツにお魚のだしも入っているのだね」なんて、いろいろ考えながら麺をすする。
思索にふけったのはそのあたりから。
これは、お笑いに似ているぞ、と思ったんだ。ラーメンとはつまり、松本人志であると。
ラーメンなんて、別に美味いんだ。お笑いなんて別に面白いのと一緒で。ぼけーっと食って、ふひーっと爪楊枝などつかって、ぷかーっとタバコでも吸って仕事に戻ればいい。なのに、ぼくはいつしかラーメンを分析している。プロの調理人の作品に対して、批評をぶっている。
ぼくは「ごっつ」の世代で、今でも「ごっつ」は本当に面白かったと思っている。だけど、それが「どう面白いか」を考え始めたのなんて松本人志がそれを放り投げたずっとあとのことで、それこそ「VISUALBUM」や「一人ごっつ」を経たのちに時代を巻き戻って「トカゲは実に実験的な」とか「イカメシ殺人はどうだ」「AHOAHOマンこそが」などなど、そんなことを言い出すようになった。当時はただゲラゲラ笑っていただけなのに。
あるときを境に、松本は笑いを語りだした。あまりに大きくなりすぎたせいで、誰もがその禁忌を許してしまった。それは欽ちゃんにさえ許されなかったことなのに。松本は遅れてきた世代の芸人たちに大きすぎる影響を与えただけでなく、視聴者のあり方さえ変えてしまった。松本のように笑わせることはできなくても、松本のように芸人を評することならできる、あるいは、できるような気がする、できている気分になら浸れる、そんな視聴者を大量に生み出したのだと思う。その結果、ぼくたち視聴者は「ただゲラゲラ笑う」という行為に後ろめたさや劣等感を覚えるようになった。笑いが、笑うことに圧力をかけ始めた。そして笑いは大衆芸能からファッションになった。笑いに対するものの見方に、「オシャレ・わかってる」と「そうじゃない」が現出した。
同様に、誰かがラーメンを語りだした時期があったんだと思うんだ。ぼくたちはただ能天気にズルズルとラーメンをすすることが許されなくなった。ラーメンもまた、大衆のものから、ファッションツールになってしまった。
笑いもラーメンも、いつの間にか、気軽に賞賛することができなくなってしまった。「天下一品のラーメン美味いよね」「友近って面白いよね」まかり間違って初対面の人にそんなことを言ってしまったら、ぼくは即座に値踏みされてしまう。テレビの前じゃない場所で、ラーメン屋の外で、ぼくは一瞬にして他人に見通されてしまう。
さらに始末が悪いのが、たまにそういうパリパリに固まったぼくの舌や心を突き抜けてくるやつがあることだ。本当に美味いラーメンや、本当にゲラゲラ笑える漫才に出会ってしまうことがある。そのパリパリを突き破られる快感が忘れられなくて、ぼくはさらにパリパリを固くしようとする。より気持ちよく突き破られたいがために、ぼくは身を硬くして、ラーメンやお笑いと対峙することになる。
だからどんどん、世の中に美味くないラーメンと笑えないお笑いが増えてゆく。
とても不幸なことだ。
ぼくはお笑いが好きだし、ラーメンが好きだ。基本的に、それらの全部が好きだ。あのころみたいに、何も考えずに、ただゲラゲラズルズルとその快楽に身を任せられる日がきてほしい。普通に美味いラーメンを食べながら、普通に美味いと言えないぼくは、そんなことを考えていた。
http://anond.hatelabo.jp/20090602012124 ラーメンも笑いも、一周させてしまえばいいと思うよ。一周して、色々見てきた上で、元の場所に戻ればいい。もう一度純粋に面白いものに対して、語ら...
評論とか関係無しに「天下一品が好き」は値踏みされる話題だと思うよ。 ニンニク入れてって言っただけでスープより多いニンニク、ネギ入れてって言っただけで麺より多いネギが入る...
http://anond.hatelabo.jp/20090602012124 「値踏みされる話題だと思うよ」という日本語が意味不明なのは置いといても、 たかだか一店舗(もしかしたら一店員)の特徴を、全体の特徴のように捉...
まあまあ。ひとつ前の増田は確かにアホだけど(ニンニク入れる量もネギ入れる量も、決まってるなら自分で指定しろよw)落ち着いて。 天一食いたくなってきた。
そ、それはスマンかった 俺は2店舗ぐらい入ってそうだったし、テンイチの話題になると大抵みんなそう言うので、てっきり全店舗でそうかと思ってたよ 更にテンイチ好きは絶対こう言...
>テンイチに来て、ニンニク頼まない人間は人生を損している ンなこと言わんー。「絶対」とかくくらないでくれ。 >あのドロリとしたスープを、最後に飯を入れて食べるのがたまら...
そうなの? 俺が行った店は逆に店員が入れてた。 更に「他は知らないが京都じゃ全部こう」と言われたよ。 お互いに経験語ってもしょうがないので、ソースを探してみた。 http://ja.wikipe...
そうだったのか。目黒店は特殊だったようだ。すまんかった。 飯田橋店では特に頼まなかったけどごく普通の量しか入ってなかったと思う。 高田馬場店はどうだったかな… 東京と京都...
随分信憑性のないソースだな そういうのソースって言っていいのか?
他にもgoogleで「天下一品 ニンニク」と入れると、店側のメニューに「ニンニク」があるという記述は100ページぐらい見つかるんだが 100人ぐらい嘘吐きがいるという認識でOK...
俺は全国の天一めぐりをしてすべての店の特徴をメモしてるぜ!という奴でも現れないとよくわからんな。 昔の知人に、全国のリンガーハットを巡って★による格付けをメモっていたや...
そもそもチェーン店なんだから、ひとつの店に入ってそこで得た経験が記憶になるだろ。 五反田店で食べてマズ!って思ったら天下一品=クソマズラーメン野郎認定されるわけだ。 マニ...
また極論だなあ。 チェーン店でも店によって味が違うなんてザラよ? 天一みたいに味が極端な店なら尚更。 まあ、あんたみたいにしか考えられない奴はマックでも行ってろってこった...
自分の吐いたツバと他人のツバが混じっても気にせず飲み込むようなバカは黙ってろってこったチンカス オマエの体験ではマックの店舗ごとに味が違うのか??ザラなのか???どこ...
天下一品の本店のある京都では、わりと店舗ごとのオリジナリティがある。 スープの味も、これは本社から送られてきたスープそのままだなという店と 独自の味付けをしている店がある...
各店舗で味が異なるのが、天下一の味なのれえす!(笑) ってか。やっぱり本部の怠慢としか思えんな。結果としてユーザーは違う味わいを楽しめていいんだろうけどさ。どこどこの...
http://www.gem.hi-ho.ne.jp/t-iwami/tenichi/main.htm 全国の天一をめぐって格付けしている人のサイトあった
天下一品のラーメンは通常のラーメンから随分ズレたところにあるんだから、 あれは通常のラーメンと比較できないものだ。 つまりそういう普通の一般的なラーメンの評価軸で語ると...
おなじ屋号を掲げて営業しているわけだから、たかだか1店舗の特徴といえども 全体の特徴ととらわれても仕方のないことでしょう。 自分は6,7年前川崎にあった天下一品で初めて食べた...
それは、元増田の文脈で例えると 友近の芸風がこうだから吉本興業はこんなもん 太田光がああだから太田プロの芸人は残らずアレ って言ってるようなもんじゃないか。部分と全体のと...
家系は、豚骨と鶏がらのだし、鶏油、醤油タレに太い麺。 ラーメンの分類なんか、自分が食べて「うまい」か「うまくない」の二つのカテゴリーで十分だと思うが、家系ではないラーメ...
てっきり自分の家系を語りだすのかと思ったぜ。
http://anond.hatelabo.jp/20090602012124 このエントリの内容にいっぱい疑問が湧いたのですが質問させてください これに付いたはてブは「何言ってるのコイツ」的なやつかと思ったら、なぜか皆...
http://anond.hatelabo.jp/20090603171718 なんで誰も意見くれないんですか! しっかりお願いします!!
コメントしやすいエントリだったってことじゃないの ある程度伸びれば人も集まる 政治色もないただの随想にそこまでソースの正確さが必要かなあ
お笑いだけがメディアでは断じてないし。 ラーメンだけが大衆料理でもない。 皆が批評家になったのは、どの分野でも一緒。
答えは「Don't think! Feel!」(ブルース・リー)の中にある。 そしてそれはもっとも難しいことなんだ。 たぶんあなたは、そして私も、旅行へ行って絶景にたどり着いても現実感を得られな...