盗撮・流出・実録レイプと題されているエロコンテンツの99%は、作り物なんだと思う。少なくとも「オモテ」で流れているものはね。
でも、そういう考えに至るまで、私の中ではモヤモヤがあった。
10年前は、今と比べて、電車の中吊り広告の内容とかも酷くてさ。
「OLの部屋を盗撮」
「流出ヌード」
「10万円でオッパイ見せて! 街の美女8人が『OKよ♪』」
そんな文字が躍ってたんだよね。
あと、小さな本屋とかだと、ゾーニングもあってないようなもので、盗撮物のビデオとかのパッケージが見えて、いかにも隠し撮りって感じの写真(赤外線カメラとか、画質の悪いのとか)があしらわれてた。
これが100%嘘だと確信できなかったんだ。
「サスペンスドラマや戦争映画の殺人は作り物だってわかってるだろ?
どうしてポルノは特別なの?」
そんな声も聞くけれどさ、殺人事件の被害者役や戦死者を演じた俳優は、その後でインタビューに答えていたり、また他の番組や映画にツルッツルの無傷で出演してるよね。メイキングや特殊メイク技術の紹介を見て、へえーって思うこともあるし。
AVでも、女優さんが毎回同じ芸名で、色々なシチュエーションの作品に出ている場合は、犯罪性のない場で撮られた作品ってことがわかる。
でも、盗撮物はどうなんだろう。
もし本物なら流石に捕まっているはず。捕まるリスクを冒して盗撮をする人もいないだろうし、街頭で通報される覚悟で「オッパイ見せて!」と声をかけたりしないだろう。
演出としての隠しカメラ風画像と隠し撮り風のシチュエーション、本物と区別をつかないものだってあるんじゃないか。上手いカメラワークと迫真の演技で本物っぽく作ったものとガチの盗撮は区別がつくの?「出演者の名前が書かれていないのもリアリティのうち」と言い逃れしたって、証拠なんてないから、疑わしきは罰せずということで野放しになるどころか「リアルな作品」として評価が高まるんじゃないの?
隠し撮り画像とかも、もしかすると、小遣い稼ぎの一般人から買い取れば、低リスクの上、合意のもとに撮影するより安上がりなのかもね。被写体にばれて訴えられる可能性なんてゼロなんじゃない?「盗撮した人が儲かってる社会」に、私達は生きているんじゃないの?
怖くてたまらなかった。
一般女性の日常が切り取られて、コンテンツとして売りさばかれているんだろうか? 「本物かどうか証明できないから」という理由で、野放しになっているんじゃないのか?
そのころは、女子高生として普通の生活をしているだけなのに性的な対象にされるのがイヤになっていた時期だった。学校には不審者が出没して、教師が見回りを強化していた。教師が盗撮者を未然に阻止したこともあった。痴漢に頻繁に遭って、スカートを切断されたりもした。そしてブルセラや援助交際が巷で流行っていると報道されてた。
本物なのか作り物なのかを外側からは区別のできないエロコンテンツは、そんな気持悪さの延長だった。
実物を買って中身を確かめる気になんてとてもなれなかったし、だからこそ恐怖心は強まるばかりだった。
エロコンテンツ自体を規制することには断固反対する立場だ。けれど、エロコンテンツを流通させている人や、教育に携わっている人に、ちょっと頼みがある。
そういうコンテンツが流通するのを見て、作り物かどうか判断する術をもたない人は、世の中に一定数いるんだよ。特に18歳未満の人は、本物を見て判断することもできないまま、「盗撮」「流出」「実録」と証する作品が流通する様子だけを見ることになる。
だから、作っているものがもしも本当に「嘘」なら、どうか、誰もが嘘を嘘と見抜けるだけの材料を提供してほしいんだ。サスペンスにおける殺人がフィクションであるのと同じくらいの確信を、エロコンテンツの中での非合法行為においても、得たいんだ。
必要があれば、「免許保持者によって作られたコンテンツである」ということを、公共の端末から照会できるようにする。
エロコンテンツがどう作られるかという話を、清濁併せて、未成年にも教える。
エロは隠されてばかりいる分野だからこそ、もっと、その実情を知りたい。